今日は、暖かくなるらしい。久しぶりの太陽がある。
昨日「枯木のある風景」の感想を書いたが、講談社文芸文庫版・宇野浩二『思い川/
枯木のある風景/蔵の中』を読んだ。他の二編も、じつによかった。三十年に及ぶ小説家牧と芸妓三重との真の恋愛を描いて、滋味すら感ずる作品は当然ながら、宇野浩二の代表作であり、読売文学賞を受賞し、さらに出世作である『蔵の中』も奇妙な饒舌感があって圧倒された。
欠片ほど貴重なものがあるものかかけら残して滅ぶるものか
人の欠片を拾い蒐めて人があるわれも欠片の集積ならむ
人のかけら、とりわけわれの欠片を宙めがけ投げて棄てたり
『論語』季氏六 孔子曰く、「君子に侍するに三愆あり。言未だこれに及ばずして言ふ、これを躁と謂ふ。言これに及びて言はざる、これを隠と謂ふ。未だ顔色を見ずして言ふ、これを瞽と謂ふ。」
君子に侍して三種のあやまち。まだいうべきでないのに言うのは「がさつ(躁)」、言うべきなのに言わないのは「隠す」、君子の顔つきも見ないで話すのを「盲(瞽)」という。
君子に侍する時の注意を述べる孔子、弟子を信ずることなかりしか
『古事記歌謡』蓮田善明訳 八六 カルノ太子
カルノ太子は、伊予の温泉に流された。流された時の歌、
天飛ぶ 鳥も使ぞ 大空翔る鳥さえも 二人の使となりましょう
鶴が音の 聞えむ時は 鶴の鳴く音を聞いたらば
わが名問はさね 尋ねて下さい わたくしを
この三首(八四・八五・八六)は「天田振」である。
天を飛ぶ鳥の鳴く音を聞く時は二人はここに居るとぞ思へ