元旦です。まあ、晴れてます。
よくしたもので齢七十にならむとす今年こそよき年にてあれよ
と、もう一首。
去年今年貫く棒のごときものあればこそ今年よき年であれ
譫言
譫言に申すか石の神ありて祟りをなせり、しかし敬すと
宿神は翁の神か。後ろ戸に隠りし三人、をどりあそぶ
『孟子』縢文公章句下61 匡章曰く、「陳仲子は、豈誠の廉士ならずや。於陵に居り、三日食はず。耳聞ゆる無く、目見ゆる無きなり。井上に李有り。螬、実を食ふ者半ばに過ぎたり。匍匐して往き、将りて之を食ふ。三咽して、然る後に耳聞ゆる有り。目見ゆる有り」と。孟子曰く、「斉国の士に於て、吾必ず仲子を以て巨擘と為さん。然りと雖も、仲子悪んぞ能く廉ならん。仲子の操を充てば、則ち蚓にして後可なる者なり。夫れ蚓は、上、槁壌を食ひ、下、黄泉を飲む。仲子居る所の室は、伯夷築ける所か、抑々亦盗跖の築ける所か。食ふ所の粟は、伯夷の樹ゑし所か、抑亦盗跖の樹ゑし所か、是れ未だ知る可からざるなり」と。
川本千栄『土屋文明の百首』
小工場に酸素溶接のひらめき立ち砂町四十町夜ならむとす 『山谷集』
<小工場に金属を酸素溶接する青白い光がひらめき立ち、砂町四十町は夜になろうとしている。>
前歌と同じ「城東区」より。新しく大東京市に加わったこの区の砂町四十町と呼ばれた地域は、荒川放水路が東京湾に注ぐ近くで、中小工場の密集する地帯だった。近代的な工場地帯の風景は定型に収まり切らず、結句以外は全て字余りとなっている。「酸素溶接の(炎の光が)ひらめき立ち」と省略しても、夕暮れの町工場に間断無く火花が散る様子を活写する。無機質な工場群を乾いた筆致で描く手法は、短歌の新しい面を切り拓いた。
軍艦は出でたるあとの軍港に春の潮みちくらげ多く浮く 『山谷集』
<軍艦が出港した後の軍港には春の潮が満ち、くらげが多く浮いている。>
昭和八年「横須賀」より。横須賀港の軍艦三笠と、造船業で活気づく港の様子を描く。この時期「満州国」の建国を巡って日本は国際的に孤立していき、国は軍備の拡張急いでいた。軍港に立ち、戦争への複雑な思いを歌った連作だが、この歌は、「軍艦は」と「は」では巨艦が去った後の空間を描き、その海に満ちる春の潮と、透き通るくらげが揺れる様子を描く。軍需工場の風景ながら、柔かい雰囲気の歌となっている。