朝から晴れている。昨日より二℃ほど上がるらしい。暑い。
牛のごとくこの丘のにたたずめば見るもの聞くもの新鮮なりき
乳牛の乳をこそ指に搾りだすこの丘の上牛舎ありけり
乳牛を近くに見しはをさなき頃恐ろしくしてやがて親しむ
『中庸』第十二章 誠なるり明らかになる、これを性と謂ふ。明らかなる自り誠なる、これを教えと謂ふ。誠なれば則ち明らかなり、明らかなれば則ち誠なり。
唯だ天下の至誠のみ、能くその性を尽くすと為す。能くその性を尽くせば、則ち能く人の性を尽くす。能く人の性を尽くせば、則ち能く物の性を尽くす。能く物の性を尽くせば、則ち天地を以て化育を賛くべし。以て天地の化育をくべくんば、則ち以て天地と参なるべし。
その次は曲を致す。曲に能く誠あり。誠なれば則ちはれ、形はるれば則ち著るしく、著るしければ則ち明らかに、明らかなれば則ち動かし、動かせば則ち変じ、変ずれば則ち化す.唯だ天下の至誠のみ、能く化すると為す。
人間の独自の役割を果たしてこそ天地とならびたち参となるべき
前川佐美雄『秀歌十二月』七月
今は吾は侘びそしにける生きの緒に思ひし君をゆるさく思へば (同・六四四)
「侘びそしにける」は気力が抜けて心の沈みきっている状態。「生きの緒」は命の綱というほどの意。「ゆるさく」は、放任、放念で、ゆるめ放ちやるの意、ゆるそうとすること。一首目の意は、「今の私はすっかり生きる気力をなくした。命の綱とも信頼していた人だけに、もうほおっておくより仕方がない。したいままにゆるすほかないと思うと」ということになる。ほかの女に心変わりした相手の男(略)命がけで愛してきた男だったのに、もはやせんすべもないあきらめている。心身を労して困憊しきっている状態さながらに歌われていてあわれである。とくにその調べに心うたれる。
「今は吾は侘びそしにける」と悲観しきっている一、二句の出かけからして、いいようもないあわれを感じる。一時代前とはちがう。やはり天平の文化に浴した人の歌である。知的複雑である。繊細な心理をのべていて、しかも鋭い。しきりに近代を感じさせる。
巻四相聞のなかの紀郎女の「怨恨の歌三首」の二首目の歌である。(略)他の二首も思い深い秀歌である。
世間の女にしあらばわが渡る痛背の河を渡りかねめや (同・六四三)
白妙の袖別るべき日を近み心にむせひ哭のみし泣かゆ (同・六四五)