7月14日(月) 

昨夜は雨だったようだが、今も降りそうで……

高島俊男『しくじった皇帝たち』(ちくま文庫)を読む。隋の煬帝、そして幸田露伴の『運命』が論じてある。煬帝はさておいて、『運命』がさんざんに貶されていることに驚くし、また無念きわまりない。『運命』という小説を凄いと思って、第四歌集に一連を拵えてしまったので、今更という感じだ。露伴が、『明史記事本末』のみに頼って、史実が史実でなくなっていることに驚くよりない。高島氏の言うことは、おそらく事実だろう。事実だけにまんまとのせられた自分が恥ずかしい。といっても取り返すことはできそうもない。『運命』を称賛したっていいだろう。

  肥満型の女性が二人相次ぎて右手に傘をぶら提げてゆく

  一人は黒いワンピースも一人は彩色のしゃれた服しかし肥満体懸命に歩く

  この道を行けば私鉄の駅ならむ肥満の二人遠く見上げて

『中庸』第十八章一 唯だ天下の至聖のみ、能く聡明叡智にして、以て臨むことあるに足り、寛祐温柔にして以て容るることに足り、発強剛毅にして以て執ることあるに足り、中正にして以て敬することあるに足り、文理密察にして以て別つこと有るに足るると為す。

にして、而して時にこれを出だす。溥博は天の如く、淵泉は淵の如し。れて民敬さざること莫く、言ひて民信ぜざること莫く、行なひて民説ばざること莫し。

を以て声明は中国にし、きてに及ぶ。舟車の至る所、人力の通ずる所、天の覆ふ所、地の載する所、日月の照らす所、霜露の隊つる所、凡そ血気ある者は、

尊親せざること莫し。故に天に配すと曰ふ。

  最高の聖人こそが聡明・叡智によくのぞみおのづから天にも並ぶものなり

前川佐美雄『秀歌十二月』八月 川田順

雁一列真上の空に近づけり荒らくして徹る声きこえつつ (歌集・旅雁)

昭和九年五十三歳の作。十年刊行の第七歌集『旅雁』に出ている。「高層建築の屋上にて」と題する「雁」連作十首の中の一首である。この高層建築はいうまでもなく

順の執務していた大阪北浜の住友本社ビルである。このころは地位はさらに上がって理事重役である。忙中閑をえてある時屋上に出た。八月か九月か、まだ暑い大都会のどまん中である。その時雁の声がきこえた。思いがけない早い雁のおとずれだけにただならぬ感懐を覚えた。それが十首の歌になった。その中でもっともすぐれた一首だが、この「荒らしくして徹る声」というのがこの歌の要である。

(略)私は『旅雁』をよしとするものだが、しかもなおこの「荒らしくして徹る声」がそのころの順の声を聞くように思う。その雁の荒い声は順のすべてを象徴しているようだ。順はそれからまもなく住友を辞した。一切の縁を切って完全に一個人に帰した。(略)そうして戦後問題を起こして関西を去り、東に帰住した。住友と歌と、紆余曲折の長いまわり道をしたものである。(略)湘南の地に隠棲してから順の老年の歌がはじまる。

偏屈房主人
もともと偏屈ではありましたが、年を取るにつれていっそう偏屈の度が増したようで、新聞をひらいては腹を立て、テレビニュースを観ては憮然とし、スマートフォンのネットニュースにあきれかえる。だからといって何をするでもなくひとりぶつぶつ言うだけなのですが、これではただの偏屈じじいではないか。このコロナ禍時代にすることはないかと考えていたところ、まあ高邁なことができるわけもない。私には短歌しかなかったことにいまさらながら気づき、日付をもった短歌を作ってはどうだろうかと思いつきました。しばらくは二週間に一度くらいのペースで公開していこうと思っています。お読みいただければ幸い。お笑いくださればまたいっそうの喜びです。 2021年きさらぎ吉日

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