今日も、相変わらず暑いのだ。
青瘀相
髪すらもちらばりわづかの骨残す。蛆虫たかり銀蝿蠢く
はかなしとおもふもすでに骸骨のすがたになればおどりだすべし
いつのまにか鳥辺野山に捨てられて蛆やけもののいたぶりものか
『孟子』梁恵王章句下12-3 王曰く、「善いかなや言や」と。曰く、「王如し之を善しとせば、則ち何為れぞ行はざると。王曰く、「寡人貨を好む」と。対へて曰く、「昔者、貨を好めり。詩に云ふ。『乃ちし乃ちす。乃ちをむ。にに。げてていにせんことを思ふ。斯に張り、干戈あり。にめて行を啓く』と。故に居る者は積倉あり、行く者は裹糧有り。然る後以て爰に方めて行を啓く可し。王如し貨を好むも、百姓と之を同じうせば、王たるに於て何か有らん」と。
王もまた財貨を好むされば百姓とともに利を受けよ王にあらん
前川佐美雄『秀歌十二月』十二月 大伴坂上郎女
恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば (万葉集巻四・六六一)
大伴坂上郎女は旅人の妹である。(略)天平時代を代表し、大友家の末期をいろどる女流歌人の第一人者である。
「恋ひ恋ひて」は恋しくて恋しくてたまらないということであろう。「逢へる時だに」は逢っている時だけでもせめて、というほどの思いをこめている。「愛しき言」は愛情のこもった親しく優しい言葉。「尽くしてよ」は尽くして下さいよの意。「長くと思はば」はいつまでも末長くと思うならばである。一首の意はいうまでもないことだが、「恋しくて恋しくてたまらなかった。それが今やっとお逢いできたのですから、せめてこの時だけでも優しいことばのありったけを聞かせて下さいな、いつまでも末長くと思いなさるならば」と女が男に甘えているのだ。いや訴えているので、それが「長くと思はば」の結句にいいふくめられている。(略)男というものをよく知っている女の歌だ。(略)散文で書けないのが歌である。書けないところだけが歌だといってもよい(略)よい歌は解釈や鑑賞の手を用いるまでもない。すぐれた歌はよいの一語でたかさんだ。
(略)これは坂上郎女が娘の二嬢のために代作したので、その事情を知っている家持が、大友家の家集を編纂する時、本当の作者名を出したのだろう、というのが折口信夫の想像である。(略)この歌は若い女の歌ではなく、男女の間をよく知っている恋の経験者、その遍歴者の口吻の感じられるところ、さすがは坂上郎女なればこそと思われる。