9月14日(日)

朝は涼しいが、35℃になる。

  激しき豪雨の後にたちまちに雨滴るみどりの山は

  尖石の記念館のがちゃがちゃに、仮面土偶を得る。さてもやったり

  雨あがれば蟬鳴く声の忩忩し。森の中なる露天湯に沈み

  坂登りめざしにくる。しづかなる池は浮かべり

『孟子』梁恵王章句下18-2 今、燕其の民を虐ぐ。王往きて之を征す。民以て将に己を水火の中よりはんと為す。して以て王の師を迎ふ。若し其の父兄を殺し、其の子弟を係累し、其の宗廟を毀ち、其の重器を遷さば、之を如何ぞ其れ可ならんや。天下固より斉のきを畏るるなり。今、又地を倍して仁政を行なはずんば、是れ天下の兵を動かすなり。 王速やかに令を出し、其のを反し、其の重器を止め、燕の衆に謀り、君を置きて而る後之を去らば、則ち猶ほ止むるに及ぶ可きなり」と。

  斉王よまづ速やかに令を出し而して後新しき君主をさだむ

林和清『塚本邦雄の百首』

ガスマスクしかと握りて伏しにけり壕内の濕り身に迫りくる (第一歌集以前)

すえての教科で優秀な成績を収めた塚本だったが、運動だけはまったくダメであったらしい。現代ならそれも個性と受け流せるだろうが、軍事教練ですぐに鉄拳をふるわれる時代にはまさに地獄であっただろう。

愛する美しいものすべてを奪い取り、青春を踏みにじった戦争への憎悪は、戦力にならぬ男はクズだという、自分の存在を全否定するような教官たちへ真っ先に向けられたに違いない。

ただこの歌はすごい。時空をへだて、防空壕内の濕度も土のにおいも現前させる。連体終止の臨場感よ。

碧澄む甕の秘色は杳き世の白鳥翔けし天とこそ見め (第一歌集以前)

アニメ『この世界の片隅に』(二〇一六)の舞台ともなっている呉の海軍工廠に塚本は徴用された。

その呉での友人・高橋忠臣の勧めで結社「木槿」に入会し、幸野羊三に師事する。作品を見せると「白秋の影響がある」と指摘され、兄から歌集や歌誌を譲られ読んだでいたことに思い至り、ハッとしたという。

この歌は師の宅「幸野苑」での歌会にはじめて参加して出詠したもの。「甕の秘色」は美学に力が入り過ぎ、係り結びも大仰。いささか凝りすぎている。点数がまったく入らなかったのも無理はない。

偏屈房主人
もともと偏屈ではありましたが、年を取るにつれていっそう偏屈の度が増したようで、新聞をひらいては腹を立て、テレビニュースを観ては憮然とし、スマートフォンのネットニュースにあきれかえる。だからといって何をするでもなくひとりぶつぶつ言うだけなのですが、これではただの偏屈じじいではないか。このコロナ禍時代にすることはないかと考えていたところ、まあ高邁なことができるわけもない。私には短歌しかなかったことにいまさらながら気づき、日付をもった短歌を作ってはどうだろうかと思いつきました。しばらくは二週間に一度くらいのペースで公開していこうと思っています。お読みいただければ幸い。お笑いくださればまたいっそうの喜びです。 2021年きさらぎ吉日

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA