朝から晴れ、しかし寒い。
冬の装ひかくも面倒なものなればいつそ十二単でも着てやらうか
便所に行き便をした後パンツ上げヒートテック上げズボンにベルト
天地の別れし時より冬なれば恐らく男女の装ひ異なもの
『孟子』縢文公章句上50-2 陳相孟子を見、許行の言を道ひて曰く、「縢君則ちは誠に賢君なり。然りと雖も未だ道を聞かざるなり。賢者は民と並びて耕して食し、饔飧して治む。今や縢には倉廩府庫有り。則ち是れ民を厲ましめて以て自ら養ふなり。悪んぞ賢なるを得ん」と。
孟子の言は長くなるようなので、ここでは歌にはしない・
藤島秀憲『山崎方代の百首』
卓袱台の上の土瓶に心中をうちあけてより楽になりたり 『こおろぎ』
農家の竹藪の中から拾って来た土瓶は方代の身内の一人、いや、唯一の身内だ。歌が発表されたのは昭和四十九年だから、たった一人の肉親・姉のくまが亡くなってから九年が経とうとしている。
土瓶は答えてくれないけれども、土瓶の中の酒を吞みながら、あれやこれやと来し方を思い出しているのだろう。酒の残りを確かめるために、ときどき土瓶の蓋を開けたりして。
この歌を含む「めし」十五首により、第一回『短歌』愛読者賞を受賞した。
遠方より友来りけり目隠しをして鶏小屋の鶏を選べり 『こおろぎ』
「朋有り、遠方より来る」である。嬉しい気分は孔子と同じだが、孔子と違うのは鶏をご馳走しようとしたことだ。しかも自分で絞めて。とは言え忍びないので、せめて目隠しをして。なんともともに優しく、しかも鶏にも優しい方代。
でも、方代は鶏を飼っていなかった。だから三句以下はフィクション。だけどフィクションだって全然問題ない。友を歓迎し、もてなそうとしている気分が伝われば、それでよい。方代は気分を大切にした歌人。嬉しい気分、悲しい気分。気分を伝えるための演出は惜しまない。