2024年2月8日(木)

朝は、まだまだ寒い。日中は昨日よりは温度が上がるとは言っているが。

  真夜中にペットボトルのお茶をのむ口あけて飲むペットボトルの茶

  ふらふらりあかりすくなき室内をトイレまでゆく距離のはてなし

  ぺレキシブル錠の副作用やうやく治まるか右足の赤き発疹消ゆる

『論語』一七 孔子の言。「賢を見ては斉しからんことを思ひ、不賢を見ては内に自ら省みる。」

  賢を見ては同じにならむ不賢を見てはわれとわがこころに内省すべし

『正徹物語』43  為秀の
・あはれしる友こそかたき世なりけりひとり雨聞く秋の夜すがら
この歌を聞いて、了俊は為秀の弟子になった。この歌のよさを説いた。また「雨と聞きて」とあるを、同門の老僧が「雨を聞きて」と直した。「されば和歌もただ文字一つにてあらぬ物に聞ゆるなり。」なかなか含蓄がありますなあ。

  今の世もあはれ知る友すくなくてせんかたなくて秋の夜ねむる

「時代不同歌合」後鳥羽院撰。最後
・暗きより暗き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月 和泉式部
・物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る 和泉式部

2024年2月7日(水)

薬剤の副作用、赤い発疹、発熱も治まってきたようだ。足の甲に赤いものが残ってはいるが、治まってきている。べレキシブル錠の効果はあるんだろう。だからいつ再開するのか疑問である。

  土鍋には鮭が三切、大根、葱、人参に味噌を入れ沸騰を待つ

  卓上にガス台を置き鍋つくるこのあたたかさ楽しきろかも

  箸のばし鮭、大根に人参のやはらかなりしを器に移す

『論語』里仁一六 孔子先生が言う。「君子は義に(さと)り、小人は利に(さと)る。」小気味よいほど端的な物言いである。現在、世の中「利」ばかりではないか。孔子は、現代をも批判する。

  小人は利益に明るいばかりなり利益に走るを蔑するっべきか

『正徹物語』42 俊成女の、
・あはれなる心長さのゆくゑともみしよの夢をたれかさだめん

「極まれる幽玄の歌なり。」その夜の密事は、相手と自分しか知らない。私がひとり辛抱強く待っていることを相手が知るならば、その夜の契りもなかったことにするであろうに、という心である。式子内親王の「生きてよも」の歌も、人に詠みかけているのではな。「ただ独り居て生きて明日までながらふべき心地もせず、とふべきならば今夜とへかし、となげきゐたるにてあるなり。」

  あはれなる心の長さ誰が知る訪ふなれば訪へ今宵のうちに

「時代不同歌合」後鳥羽院撰。中
・夢よりもはかなきものは夏の夜の暁方の別れなりけり 壬生忠岑
・月見れば千々に物こそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど 大江千里
・ながめわびぬ秋よりほかの宿もがな野にも山にも月や澄むらむ 式子内親王
・秋の夜の月に心のあくがれて雲居に物を思ふころかな 花山院
・もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 行尊

2024年2月6日(火)

昨日は雪で、町の屋根が白くなるほどには降った。海老名に珍しい降雪であった。明けてもまだ白いし寒い。

  雪降れば町しづかなり瓦屋根に白く積もれる雪の暈あり

  県道の降雪は溶けて往く自動車(くるま)来る自動車(くるま)さも不自由ならず

  傘さしてゆつくり進む老いわれを追越し無笠にふりむく旅人

『論語』里仁一五 孔子が「参(曾子)よ、吾が道は一以てこれを貫く。」曾子は「唯(はい)と答えた。先生が出てゆくと門人が問うた。「どういう意味でしょうか。」曾子は言った。「夫子の道は忠恕のみ。」忠は内なる真心に背かぬこと。恕は真心による他人へのおもいやり。

  わが道は一に貫く忠と恕に他ならず孔子、曾子にのたまふ

『正徹物語』41 恋歌は、女房の歌に心の底まで沁み込むような情趣の深いものが多い。式子内親王の
・生きてよも明日まで人もつらからじこの夕暮をとはばとへかし 新古今1329
・忘れてはうちなげかかる夕かな我のみ知りてすぐる月日を 新古今1035

などの歌は幽玄。俊成の女の
・夢かとよみし面かげも契りしも忘れずながらうつつならねば 新古今1391

また宮内卿の歌
・聞くやいかにうはの空なる風だにも松におとするならひありとは 新古今1199
など骨の髄まで深く染み入るような歌は、通具や良経などでも思いつけないであろう。

  恋歌は女流歌人の歌がよし通具、良経などにもおもひよりがたし

「時代不同歌合」後鳥羽院撰。上
・をとめ子が袖振る山のみづがきの久しき代より思ひ初めてき 人麻呂
・花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に 小野小町
・色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける 小野小町
・霞立つ春の山辺は遠けれど吹き来る風は花の香ぞする 在原元方
・いづくとも春の光は分かなくにまだみ吉野の山は雪降る 凡河内躬恒

2024年2月5日(月)

昨日、立春であった。暦の上では春というが、今日は雪になるような寒さである。

  愛媛県産の小さな蜜柑を食べたり小房に分けて甘き汁啜り

  蜜柑のエキスに甘さあり皮剥くときにに匂ひくるなり

  往にし世のわらべも食ひて笑顔になる小さな蜜柑、極上の甘さ

『論語』里仁一四 孔子が言う。「位なきことに(うれ)へず、立つ所以を患ふ。己を知る事莫きを患へず、知らるべきことを為すを求む。」まあ、ごくあたりまえといえば、あたりいまえだ。

  地位を求め、また認められたいと思ふことこれらは駄目だ謙虚であるべし

『正徹物語』40 「ますらを」の「を」は、昔は皆「ちりぬるを」の「を」を書いた。近頃では「うゐのお」の「お」を書く。「女神男神」は、昔から「を」だ。だから「ますらを」で構わない。了俊が書写した物語・和歌の写本でも「ますらを」は「を」を書いています。

  「ますらを」の「を」は「を」であるべし近頃はなぜ「お」と書くか判別し難し

「八代集秀逸」隠岐の後鳥羽院の企画で、定家に撰進させたもの。
・思ひ川絶えず流るる水の泡うたかた人に逢はで消えめや 後撰 伊勢
・あらざらむこの世のほかの思ひ出に今一度の逢ふこともがな 後拾遺 和泉式部
・瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 詞花 崇徳院
・嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なる我が涙かな 千載 円位法師
・きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣方敷き独りかも寝む 新古今 良経

2024年2月4日(日)

昨夜から雨が降っていたらしい。朝方にはまだ雨が残り、やがて止んだが寒いことは
変わりない。

昨晩、アーナルデュル・インドリダソン『厳寒の町』(創元社推理文庫)を読み終えた。重厚なミステリで、ほんとうにもどかしいくらいに進展のない捜査がつづき、じれったく思っていたところ、最後の数章が気持ちの良いほどに走り出す。この感覚、翻訳とはいえ大したもんだ。

  インドリダソンのミステリを読むこころに昂ぶりのあるこの数日なり

  なかなかに捜査もすすまずじれったくなったところに結末がくる

  主人公の幼き頃のとりかへしなき弟とのかかわりも語る

『論語』里仁一三 孔子が言った。「能く礼譲を以て国を為めんか」なにもむつかしこともおこるまい。「能く礼譲を以て国を為めずんば」礼のさだめがあってもどうしょう。

  礼譲を以て政治をなさざれば礼の定めも役に立たず

『正徹物語』39 本歌を取る際に上句を下に、下句を上にして詠むことはよくある。句の位置が換わらないのに意味内容が別になるものもある。また句の位置を換えてもよく似た歌になってしまうものもある。万葉集の歌などでは、詞の一、二字を換えて自分の歌にしてしまった例もある。
・さざ浪や国つ御神の浦さびてふるき都のあれまくをしも

四句までは全く同じであるのに、第五句を「月ひとりすむ」と詠んで自分のものにしてしまった。後法性寺摂政兼実公である。
「三十六人撰」藤原公任
・思ひかね妹がり行けば冬の夜の川風寒み千鳥鳴くなり 貫之
・我が恋は行方も知らず果てもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ 躬恒
・世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし 業平
・恋しさは同じ心にあらずとも今宵の月を君見ざらめや 信明
・下くぐる水に秋こそ通ふらし掬ぶ泉の手さへ涼しき 中務

2024年2月3日(土)

べレキシブルの副作用だろう発疹が足から膝、そして腿、次いで上半身に及んで痒い。熱っぽくて顔も赤い。まあ赤鬼だな。今日は節分、豆に追われることになるだろう。

  悪性リンパ腫の最後の治療全身真っ赤な副作用あり

  豆を撒く妻に追はれてしおしおと外へ出ていく赤鬼ぞわれ

  服はうち、鬼は外へと豆に打たれ外は寒きぞ如月三日

『論語』里仁十二 孔子が言う。「利益ばかりにもたれて行動していると、怨まれることが多い。」そりゃそうだ。

  利に(よ)りて行なへば怨み多くして礼譲なくば国治まらず

『正徹物語』38 古い歌に、次のようなものがある。
忘らるる身をばおもはずちかひてし人の命のをしくもあるかな
この歌は「誓ひを憑む恋」という題に相当する。源氏物語の明石の上との恋を告げた手紙に紫の上の皮肉めいた歌である。

「俊成三十六人歌合」藤原俊成
・和歌の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る 山辺赤人
・色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける 小野小町
・秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる 藤原敏行
・み吉野の山の白雪積もるらし古里寒くなり増さるなり 坂上是則
・いづ方に鳴きて行くらむ時鳥淀の渡りのまだ夜深きに 壬生忠見

2024年2月2日(金)

なんとなく熱ぽい。薬の副作用であろう。べレキシブル6錠を今夜から止めてみる。赤い発疹も上半身にたどりついたようである。

  冬寒き今日は一日本を読み色鉛筆画に力尽くせり

  リハビリに貰ふ宿題の白川郷色付けてゆく町の風景

  合掌造りの藁屋根の絵に色乗せてカラフルすぎるかたのしき暮らし

  なんとなく屈託あればベランダに伸びをしてみる発疹の腕に

  甘きもの欲すればどら焼き小豆餡甘すぎれば渋き茶を喫したり

『論語』里仁十一 孔子が言う。「君子は徳を懐ひ、小人は土を懐ふ。君子は法規を懐ひ、小人は恩恵を懐ふ」君子対小人、わかりやすい比較である。

  君子は徳を小人は土地を、さらに言ふ君子は景を小人は恵なり

『正徹物語』37 「浪のあはれ」「水のあはれ」などと詠んではいけない。「あはれ」という物があるように聞こえて悪い。しかし「あはれなる」などとは詠むべきだ。『千載和歌集』に
・われゆゑの涙とこれをよそに見ばあはれなるべき袖の上かな

  あはれなると使へばよきもの浪や水のあはれと詠めば物に似たり

『三十六人集』公任選
・もののふの八十宇治川の網代木にただよふ波の行方知らずも 人麻呂
・思ひかね妹がり行けば冬の夜の川風寒み千鳥鳴くなり 貫之
・我が恋は行方も知らず果てもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ 躬恒
・世の中に絶えて桜のなかりせば春の心ののどけからまし 業平
・山里は冬ぞ寂しさ増さりける人目も草も刈れぬと思へば 宗干