今日もいい天気。
湯河原敷島館からタクシーにくだりくる町は常と変らず
湯河原駅の土産物屋に温泉饅頭一泊旅の証しとせむか
小田原にロマンスカーを待つあひだうらやましきは会し方々
湯河原から帰ったばかりなので、今日も『論語』『春秋の花』は休載。
今日もいい天気。
湯河原敷島館からタクシーにくだりくる町は常と変らず
湯河原駅の土産物屋に温泉饅頭一泊旅の証しとせむか
小田原にロマンスカーを待つあひだうらやましきは会し方々
湯河原から帰ったばかりなので、今日も『論語』『春秋の花』は休載。
いい天気であった。
『左川ちか詩集』を読む。日本のモダニズムに現れた奇跡の詩人とおびにあるが、この夭折の女性詩人(1911~36)は、なかなかすばらしい。好きな章句はたくさんある。「いたづらな天使等が入り乱れてステップを踏む其処から死のやうに白い雪の破片が落ちて来る。」(「雪が降つてゐる」)
湯河原の源泉掛け流しの湯に浸かりしばしのあひだ夢に游ぶ
紅葉にはいまだ早くて宿の窓風に吹かれて青き竹藪
竹藪を目路にたどれば青き空狭き空間にひしめく白雲
今日は、楠原先生とその仲間たち会うために湯河原を訪ねた。そのため『論語』『春秋の花』はお休みさせてもらう。
寒くなってきた。曇りがちだが、晴れることもある。
風にゆれ、枯れ葉舞ひ散る欅なり黄色、茶褐色の葉を落としたり
公園の中央に立つ欅の木秋なればつぎつぎに葉を散らしをり
靴底に踏めば底ごもる秋の音けやき落ち葉のかなしきさ鳴り
楳図かずおが死んだという。10月28日。行年88。
楳図かずおよ死んではならぬもつともつと吾を怖がらせ恐怖を呼ばふ
『論語』子路四 樊遅、稼(穀物づくり)を学ばんと請ふ。孔子曰く「吾れ老農に如かず。」圃(野菜づくり)を為ることを学ばんと請ふ。孔子曰ふ「吾れは老圃に如かず。」樊遅出ず。孔子曰く「小人なるかな、樊須や。上礼を好めば、則ち民は敢て敬せざること莫し。上義を好めば、則ち民は敢て服せざること莫し。上信を好めば、則ち民は敢て情を用ひざること莫し。夫れ是くの如くんば、則ち四方の民は其の子を襁負して至らん。焉んぞ稼を用ひん。」
樊遅はなんとも小人なり稼や圃などと細かく言ふな
『春秋の花』 後醍醐天皇
・聞きわびぬはつきながつき長き夜の月のよさむにころもうつこゑ 『新葉集』
選者の「元弘三年(1323年)九月十三夜三首の歌講ぜられしとき月前擣衣といふことを」と前書きにあり、「題詠」である。欧陽修が梅堯臣の詩を称揚して「梅ノ詩、物ヲ詠ジテ情ヲ隠サズ」と歌ったような特色が、この一首にもある。毎年「はつきながつき」すなわち旧暦八月九月の候、私は、きっと掲出歌を想起する。これも、また、小学校低学年時代以来のわが愛唱歌である。
・事問はん人さへ稀になりにけり我世の末の程ぞ知らるる
知らぬまにはつきながつきすぎてゐるいつか夜寒にひとりさめをり
明けぬうちは曇っていたが、やがて青空に。雲が多く、やがて曇り空になるらしい。
入院中
まだ刈らぬ田を持つものの如何せむ黄金の穂の重く垂れをり
点滴を終りて内服カプセルにこれが大きい喉に閊へて
一室に六十代二名、七十代二名、この七十代がとんでもないのだ
『論語』子路三 子路曰く、「衛の君、子を持ちて政を為さば、子将に奚をか先にせん。」孔子曰く、「必ずや名を正さんか。」子路曰く、「是れ有るかな、子の迂なるや。奚ぞ其れ正さん。」孔子曰く、「野なるかな、由や。君子は其の知らざる所に於いては、
蓋闕如たり。名正しからざれば則ち言順はず。言順はざれば則ち事成らず。事成らざれば則ち礼楽興らず。礼楽興らざれば則ち刑罰中らず。刑罰中らざれば則ち民手足を措く所なし。故に君子はこれに名づくれば必ず言ふべきなり。これを言へば必ず行ふべきなり。君子、其の言に於いて、苟もする所なきのみ。」
弟子なれど子路は野なるや仕へしは君子なればや名を正すのみ
『春秋の花』 西東三鬼
・剃毛の音も命もかそけし秋 『西東三鬼句集』(1965)の『「変身」以後』所収
一九六二年二月、「中旬、ガン転移急速のため余命一ヶ月と家人に医師が告げる。」
同年四月一日逝去。行年六十二。
・春を病み松の根っ子も見あきたり」絶筆。
*
・白馬を少女瀆れて下りにけむ 剃毛されしに手術まにあはず三鬼死す
今日もまた朝から晴れ。
入院時の歌の続き
高熱もウイルスもからだを去りたまふ少し身軽に足踏みにけり
窓の外に小さき虫の動きありなんとかしやうにも手がとどかざる
雨降ればけふ一日の暗くしてさねさしさがみの野も霧のなか
『論語』子路二 仲弓、季氏の宰と為りて、政を問ふ。孔子曰く、「有司を先にし、小過を赦し、賢才を挙げよ。」仲弓が問ふ、「焉んぞ賢才を知りてこれを挙げん。」孔子曰く、「爾の知らざる所、人其れ諸れを舎てんや。」
焉んぞ賢才をりてこれをひきたてるこれが政治の要諦ならむ
『春秋の花』 里見弴
・一番繁華な表通りに、いつも耿々と月が冴え亘り、天水桶の影が濃く地に滲んで、犬の遠吠え、按摩の笛、――そんな情景のなかにばかり、あの、しみじみと悲しい気持が思ひ出された。
短編『かね』(1937)の一節。1880年代(明治中葉)の典型的な地方小都会
情景。
↓
・ひんがしの白みそむれば物かげに照りてわびしきみじか夜の月 『さびしき樹木』
・月照るや朝霧消ゆる身のまはり 失名氏
『かね』はよい。一読を強くすすめる。
耿々と月の冴えたり野のなべてかげ濃き秋の夜にやあらむ
朝から晴れている。ひさしぶりだ。
妻が「小川晴陽と飛鳥園一〇〇年の旅」を観てくる。
香薬師像、新薬師寺より失はれいくとせ経たるかその像見たし
坐に座る大日如来の像の写真妻の視線を釘付けにせむ
いく枚かの絵ハガキみやげに帰り来し妻よやさしき目をして微笑む
『論語』巻第七 子路第一三 一 子路、政を問ふ。孔子曰はく、「これに先んじ、これを労す。益を請ふ。」さらに問ふと、孔子曰く、「倦むこと無かれ。」
政を問へば孔子の答へ率先し労ふことと倦むこと無かれ
『春秋の花』 与謝野晶子
・花草の満地に白とむらさきの陣立ててこし秋の風かな 『舞姫』1906
↓
・吾亦紅すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ 牧水『別離』
・道々の秋野に花はゆらぎたれど尚眼をとじぢて見たきものあり 憲吉『松の芽』
・うつり行く女のこころしづやかにながめて秋をひとりあるかな 夕暮『収穫』
・秋さびしもののともしさひと本の野稗の垂穂瓶にさしたり 千樫『青牛集』
概して秋の秀歌は、生命の物悲しい寂寥感を帯びる。しかるに掲出歌や
・水引の赤三尺の花ひきてやらじと云じし朝露の道 晶子『舞姫』
精力の溌溂たる充実感に輝く。
・夜の二時を昼の心地にゆききする家のうちかな子の病ゆゑ
秋草の寂びてわびしき道をゆくひとりにてあるか老いの友なし
雨だ。暗い空。南方のロジテック群が雨で霞んでいる。
午前四時に覚めて起きだしトイレへ向う老い耄れならむ
青き蜜柑、剝けばすっぱい香のあふれ運動会のかけっこ思ふ
わがメガネに寄り来る小さな虫がゐるあやまりて潰すその黒き虫
『論語』顔淵二四 曾子曰く、「君子は文を以て友を会し、友を以て仁を輔く。」
君子なれば文事によって友を得てその友をもち仁を輔くる
『春秋の花』 渡辺水巴
・別るるやいづこに住むも月の人 『続水巴句帳』(1929)
↓
・岩鼻やここにもひとり月の客 向井去来『去来抄』
↓
・硝子破れ月明がこわれて見ゆる 阿部完市『無帽』1958
・草木寝て月と遊べる冷川 鷲谷七菜子『花寂び』1977
*
・手を打たばくづれん花や夜の門
岩鼻の上には月の客がゐてひとつのものを見つめつつあり