2024年7月6日(土)

暑いのだ。朝から。昼間はもっと熱いらしい。これは困った。梅雨はどうなったのだろう。

  二、三の蚯蚓乾びぶをまたぎゆくゴミ棄て葉まで迷路ゆくごと

  けふもまた蚯蚓乾びてなんとなくその肉色の見過ぐしがたく

  なにゆゑに夜の内に路上に出てくるかそのまま乾びん蚯蚓の成虫

『論語』子罕一八 孔子が言った。「吾れ未だ徳を好むこと色を好むが如くする者を見ざるなり。」 たしかにこういう人がいてもよさそうだが、やはりいないのかな。

  色好むごとくに徳を愛する人この世に見ざらむと孔子のたまふ

『正徹物語』185 閑中の雪、花盛り、まさか木、(かみ)(え)

  上つ枝に雪ふりにけりこれをこそ閑中の雪かとしづかにおもへ

『百首でよむ「源氏物語」』第十帖 
・浅茅生の露の宿りに君をおきてよもの嵐ぞ静心なき 光源氏
・風吹けばまづぞ乱るる色変はる浅茅が露にかかるささがに 紫の上
紫の上の成長に気づいた光源氏。六条御休所が娘について伊勢に下る。また藤壺も宮中を去る。その寂しさの中で紫の上の美しさ、賢さを再発見する。

いつのまにかかくもすばらしく成長せし紫の上こそたいせつにすべき

2024年7月5日(金)

朝から暑い。もっとも暑い日になりそうだが。

  あまりにも暑熱・湿度の高ければこの軀溶けゆくもいたしかたなし

  熱中症を怖れてぞ飲む清涼飲料水少し甘ければごくごくとのむ

  ペットボトルぶら提げ歩むいつもの道に影いつもより濃きものならむ

『論語』子罕一七 孔子が川のほとりでいった。逝く者はかくの如きか。昼夜を(や)めず。 これも『論語』の名言の一つだろう。昼夜も休まぬ流れのようにゆく。

  逝くものはかくのごとくとおもひしも流れのやうにはいかざるものなり

『正徹物語』183 堀河百首の作者以外でも、その時代の人の歌は、みな本歌に取ってよい。西行は鳥羽院の北面であったから、堀河院の時代には詠んだ歌がたくさんあるだろう。よって、西行の歌は本歌に取っていい。

  夏になり衣ばかりは軽くなるされど心は春を慕へり

『百首でよむ「源氏物語」』第9帖 葵 六条御息所が嫉妬のあまり、光源氏の正妻の葵を呪い殺してしまう。
・影をのみみたらし河のつれなきに身の憂きほどぞいとど知らるる 六条御息所
・袖濡るる恋ぢとかつは知りながら下り立つ田子の身づからぞ憂き 六条御息所
・浅みにや人は下り立つわが方は身もそほつまで深き恋ぢを 光源氏
・なげきわび空に乱るるわが魂を結びとどめよしたがへのつま 葵の上に取り憑いた六条御息所

2024年7月4日(木)

朝、海老名のタワーマンションは靄っていた。湿気が多いのだろう。今日も暑い。

  夜の卓に菓子煎餅がありにけり醤油に浸かりし茶の色をして

  うつすらと醤油の匂ひ香らせて江戸前せんべいぱりぱりとかむ

  煎餅に迫りて洋風菓子ありぬどうもうまさうだ洋風の菓子

『論語』子罕一六 孔子が言った。「出ては公や卿につかえ、入りては父や兄たちにつかえる。葬儀にはできる限りつとめる。酒の上のみだれはない。そのくらい私にとってはなんでもない。

  公・卿につかへ父・兄につかふ。葬も酒もみだれずばわれにこそあれ

『正徹物語』182 本歌に取る事、草子には源氏物語のことは言うまでもない。さらに古い物語も取るのである。住吉物語・正三位・竹取物語・伊勢物語は、皆、物語の中でも歌をも詞をも取る。

  源氏、住吉、正三位、竹取、伊勢はすべて取るべし

『百首でよむ「源氏物語」』第8帖 花宴
・大方に花の姿を見ましかば露も心の置かれましやは 藤壺
・深き夜のあはれを知るも入る月のおぼろけならぬ契りとぞおもふ 光源氏
・うき身世にやがて消えなばたづねても草の原をば問はじとや思ふ 朧月夜
・梓弓いるさの山にまどふかなほの見し月のかげ見ゆると 光源氏
・心いる方ならせまば弓張りの月なき空にまよはましやは 朧月夜
この帖は、この歌で幕切れだそうです。なかなか、すごい。

  梓弓入るさの山にまどひありほのかに月のかげに君ゐる

2024年7月3日(水)

朝は涼しいけれど、後は暑い。

  花期終へしパティオはまみどりの世界なりそれぞれの木にそれぞれのみどり

  よく見ればすずめの死骸細き黄色の肢よこたへて

  いつのまにかすずめの死骸がもち去られなにごともなし歩道のうへには

『論語』子罕一五 孔子が言った。「吾れ衛より魯に反り、然る後に楽正しく、雅(『詩経』の分類。朝廷の雅楽の歌)・頌(宗廟の歌)各々其の所を得たり。」

  魯に帰り楽も正しく雅も頌もところを得たりわがなすところ

『正徹物語』181 「早苗」という題で、このように詠んだ。
・旅行けばさおりの田歌国により所につけて声ぞかはれる 草根集3540

「さおり」は五月におるるなり。「旅行けば」は、いかがなものかと思われる詞であるが、古い歌に詠んでいる詞なので、さしつかえない。

  土地により田植えの歌もあれこれとあるものならむ声も変はりて

『百首でよむ「源氏物語」』第7帖 紅葉賀
朱雀院へ桐壺帝が赴き、宴を催す。が、藤壺には源氏を見られないだろうと宮中でリハーサル行なわせる。青海波を舞った源氏は光り輝いていた。
・もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の袖うちふりし心知りきや 光源氏
・唐人の袖ふることはとほけれど立ち居につけてあはれとは見き 藤壺

  あやまちとは思へど義理の母を恋ふ光源氏のすばらしきすがた

2024年7月2日(火)

朝雨だったようだが、目覚めたころには曇り、そして晴れ。今日も暑くなりそうだ。

  二月ぶりくらゐ診察に病院へタクシー予約してをくお大臣さま

  わづかなる距離なれど歩行ままならずタクシーを使ひメディカルまでを

  タクシーの予約料金莫迦にならずされど変へがたし軀の弱りには

『論語』子罕一四 孔子が「九夷(東方未開の地)に居らんと欲す」と言ったところ、或る人が「むさくるしいが、どうでしょう」と言った。孔子は「君子がそこに住めば、何のむさくるしいことがあるものか。」と答えた。
東方未開といえば、日本という可能性は、まあなかっただろうな。

  いづこへも孔子居られず九夷へと住まんとしたり何ぞいやしき

『正徹物語』180 「晩夏」の題は、暮春・暮秋などと同じで、終わりの夏という意である。暮夏というのは耳障りであるので、晩夏という。

  暮夏といふ語は聞きにくくして晩夏といふ暮春・暮秋の語あればこそ

『百首でよむ「源氏物語」』第六帖 末摘花 恋のどたばた。恋の失敗が描かれるが歌を詠む光源氏。
・懐かしき色ともなしになににこの末摘花を袖に触れけむ 光源氏

  こんなこともあるさとおもふ恋の道むずかしきもの女を探るは

2024年7月1日(月)

今日から7月だ。もう半年が過ぎたのだ。はやい。

けふ行くは河原口郵便局10月の値上げの前に絵はがきを出す

10月に値上げするべき郵便局スマートレター10枚を買ふ

赤い口ひらいてポスト佇める郵便局はまるで魔界ぞ

  『論語』子罕一三 子貢が言った。「ここに美しい玉があるとします。箱に入れてしまいこんでおきましょうか、よい買手をさがして売りましょうか。」孔子は言った。「売ろうよ、売ろうよ。私は買手を待っているのだ。」

美玉あればこれ沽らむかな沽らむかな買手をさがす孔子にてあり

  『正徹物語』179 

  ・鶯の声の匂ひをとめくれば梅さく山に春風ぞ吹く

  それほど遠くはない集の歌なり。匂いということは、どんなものにあってもよい。匂いは事物の用であるからである。

匂ひとは事物の実体なににてもあるべきならむ鶯の声

  『百首でよむ「源氏物語」』第五帖 若紫  まだ子どもの若紫を見初める光源氏がいる。

  ・手に摘みていつしかも見む紫の根に通ひける野辺の若草 光源氏

  ・ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の露分けわぶる草のゆかりを 光源氏

  ・かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらむ 若紫

紫のゆゑにありしぞ藤の縁いつかはわれのものと育てむ

2024年6月30日(日)

曇り。水無月祓である。

米澤穂信『インシテミル』は、なんとも不思議な、そして定番のミステリイであった。ようやく読み終えることができた。解説を除いて513ページある。

  昨夜降る雨に下垂るあけぼの杉葉々しほらしく幽霊のごと

  幽霊の手を下げるさま真似たるかあけぼの杉の萎れたるさま

  皐月つつじさんざんに枝刈られたり葉のなきところすかすかの枝

『論語』子罕一二 孔子の疾、病なり。子路は門人を臣たらしむ。病、間なるときに孔子が言った。「長いことだね。由の詐りを行なうや。臣なくして臣ありとする。吾れ誰を欺かむ。天を欺かんか。且つ予れ其の臣の手に死なむよりは、むしろお前たちの手で死にたいものだ。立派な葬式はしてもらえなくとも、道端でのたれ死になどするものか。」

  ひとたびは孔子治りてよからむか子路の(いつわ)り孔子を重くす

『正徹物語』178 「人妻を憑む恋」とは、他人の妻に懸想することである。源氏物語の空蟬・浮舟などが題材としてよいであろう。
・身をうぢと憑み木幡の山こえて白浪の名を契りにぞかる 草根集4543
と詠んだ。

  宇治に潜むをみなのもとへ木幡山越えてゆきけり恋ほし恋ほしき

『百首でよむ「源氏物語」』第四帖 夕顔
・心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花 夕顔
・寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔 光源氏
 夕顔をとり殺してしまった物の怪、六条御息所だろうか。
・過ぎにしもけふ別るるも二道に行くかた知らぬ秋の暮れかな 光源氏
 空蟬は、夫に従い伊予に下ろうとしているし、夕顔は死なせてしまった。

  死なせたる夕顔おもひわが手より離れし空蟬をおもふ秋なり