朝から雨、やがて曇りに。
手すりから海棠の樹に移りゆくすずめの平行移動愛らしきもの
すずめの少しふくれた二羽止まる日のひかりに腹毛やはらかくして
高きところへ飛びゆくものもあればまた地平を移るすずめもあらむ
ゑんじゅの花咲き垂るるゑんじゅの花盛りなり穂状の白き
槐のさみどり色の枝に垂れ白き穂状の花さかりなり
『論語』夏張一三 子夏曰く、「仕えて優なれば則ち学ぶ。学びて優なれば則ち仕ふ。」
官につきて余力があれば学ぶべし学びてのち力があれば官につくべし
前川佐美雄『秀歌十二月』三月 和泉式部
つれづれと空ぞ見らるる思ふ人天降り来む物ならなくに (和泉式部歌集)
「つれづれ」は、独りつくづく思いつづけてながめてあるをいうのである。
恋い思う人を待ちこがれているうれわしき気持、それを空に託して歌いあげた。(略)やはり爛熟した王朝文化を身につけた、もっと複雑で高等な、あわれともかなしともいいようのない女ごころを歌っているのだ。萩原朔太郎はこれをもって千古の名吟とさえいったが、式部傑作中の傑作なのだ。(略)ともあれ式部は当代第一の女流歌人であり、前代の小野小町といえども遠く及ばない。嫌ひょっとすると当代多くのすぐれた男の歌人たちも式部にはかなわなかったのではないか。
その千五百首にのぼるおびただしい式部の集は、ことごとく恋の歌ばかりだといってもよい。しかも初恋の相手は定かでなくても、なおその詩情は彼女の生涯のいずれの歌にも付きまつわっていると見られる。この天才も晩年は不遇で、憂悶のうちに悲惨な生涯を閉じた。尼になろうとした時の歌をかかげておく。
かくばかり憂きを忍びて長らへばこれよりまさる物をこそ思へ
小野小町のものも和泉式部のものも立派な鑑賞に思えるが、どうも「女」が気になる。とてもジェンダー平等には思えないし、男女区分のあった時代とすれば、そうなのだが、眼川佐美雄にしてそうだったかと思うと、いささか残念である。