2023年12月14日(木)

晴れているが冷たい。寒いのだ。今夜は忠臣蔵の討ち入りの日だ。

  冬の影ながなが届く処なり部屋の絨毯あたたかなりき

昨日

  たちまちに暗くなりゆく町灯り大寺の庭常闇(とこやみ)をなす

  深紅( ふかべに)色に刻々暮れゆく大山につらなる山々稜線も(べに)

『論語』為政十一 孔子が言う。「故きを慍めて新しきを知る、以て師と為るべし。」そんな簡単に人の師になれるか?

  温故知新とはむづかしきこと簡便に『論語』は記す孔子の言なり

『徒然草』230段 亀山天皇の里内裏には、妖怪がいるという。二条為世の語ったことだが、狐が人のようにひざを突いて座り、覗きこんでいた。大声に騒がれて、慌てて逃げていった。未熟な狐が、化け損なったのだろうという。

  化け損なつた未熟な狐が出てくる五条あたりのくらき館に

2023年12月13日(水)

今日もいい天気だ。そう言えば昨日は小津安二郎の亡くなった日だった。だからテレビで「東京物語」とか、やってんだ。録画しよう。

  この世から十二月十二日に去りにけり小津安二郎に『麦秋』ありき

  「大和はええぞ」の言葉にうなづくわれならむ麦が揺れてる心もゆれる

  あけぼの杉の茶色の枝に茶色の葉冬木になるもさう遠からず

鳥羽亮『絆 山田浅右衛門斬日譚』(幻冬舎文庫)を読む。七世山田浅右衛門吉利の斬日記録である。綱淵謙錠『斬』と重なるが、なかなかよかった。『斬』が史伝の如きものなら、あきらかに小説であり、読みやすいが、しかし内容は、死を扱って重い。

  浅右衛門吉利が首を斬り落とすみづからの弟子をみづから落とす

『論語』為政十 孔子が言った。「其の(な)す所を(み)、其の(よ)る所を(み)、其の安んずる所を察すれば、人(いづく)んぞ(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや。」これまた端的だが、わかりやすい。結句がくり返している。よほど強く言いたいのであろう。

  人柄は焉んぞ廋さんや繰り返し言ふ孔子先生かくも伝えたし

『徒然草』228段 千本の釈迦念仏は、文永(1264~75)の頃、如輪上人が始められたという。
229段 優れた細工師は,少し鈍い刀を使うという。妙観の刀はさして切れ味がよくない。

  よき細工師はさほど切れるを用ふるなく鈍き刀を用ふるものなり

この二段も薀蓄のごとし

2023年12月12日(火)

昨夜から朝まで雨。外は霧のような状態で遠くが見えない。10時ころには上がってくる。今日は、石川五右衛門が釜ゆでにされたとも伝わる。

  世に尽きぬ盗人(ぬすびと)(たね)釜のうちに熱さに叫ぶ石川五右衛門

  昨夜( きそ)からの雨に濡れたる枯れ落葉踏みて老耄(ろうもう)の心に愁ひ

  霧閉す海老名の町に物流の倉庫群見えずこれも良き景

  精悍とわれにむかひて前登志夫たつた一度の逢ひに終りし

二日間憩んでいた『論語』と『徒然草』の再開である。  

『論語』為政九 孔子から見た回賛というべきか。ふだんはまるで愚かなようだが、そうではない。回は愚かではない。回は、孔子最愛の門人。孔子より三十歳若かったが、四十一歳で孔子に先だって亡くなる。孔子には残念なことだったろう。

  愚かではない回のことたのしげに語る孔子の口惜しかりき

『徒然草』227段 六時礼讃は、法然の弟子、安楽が経典の文句を集めて作り、その後、太秦の善観が譜を定め声明にした。一念義念仏の起こりである。後嵯峨院の治世からはじまり、法事讃も善観が創始したものである。これまた兼好法師の蘊蓄に見えるが。

2023年12月11日(月)

昨夜は赤坂モントレに泊った。さすがにむすめの披露宴は疲れた。モントレのすぐ隣が虎屋である。虎屋で土産物を買い、千代田線経由で小田急線へ。疲労困憊で帰宅した。朝の、開店したばかりの虎屋が閑散としていて、よかった。

赤坂御所の森のなかなる公孫樹の木たかだかとして耀く黄葉(もみぢ)

  豊川稲荷に狐の像のこれほどに多きかあやしきものたちのぼる

  足弱が赤坂の坂をとぼとぼとのぼりゆくなりこの老耄が

  虎屋の整然としたる店内に並ぶ甘きもの美味(うま)さうである

二日間『論語』と『徒然草』はお休み。ご勘弁ください。

2023年12月10日(日)

娘の結婚披露宴である。表参道の式場で華やかに、けっこう盛り上がり、そしてしっとりとした披露宴であった。バージンロードを歩く、私の足は何度かよろめいたが、逆に娘が支えてくれたように感じている。私の足は、それほどに悪性リンパ腫によって衰えている。私たち夫婦のために作った動画に感動したのは老いたる親ということか。祝婚歌から。

  師走(しはす)十日(あ)(こ)嫁ぎゆく東京の空ひろびろと青く澄みたる

  夜の夢に(こ)の祝婚歌案じたりわが(み)かるがる動くも夢なり

  表参道の路地へまがれば緑多き館へつづく(こ)の婚の場所

  歩みだすむすめ想へばと胸つくこの思ひこそわがものなりき

  銀杏(いちやう)の葉黄金色(わうごんいろ)にかがやくとき歩みだすなり花嫁わが(こ)

2023年12月9日(土)

またよく晴れている。

  わが胸が早鐘のごと鳴りひびく頻脈はときに龍の怒りか

  暁闇(あかつきやみ)にセブン・イレブンの明かりあり夜に耀くはいのちのひかり

  歯に噛めば林檎の蜜のしたたりを甘さを感ず北信濃の香を

『論語』為政八 子夏が孝について聞いたところ、孔子が答えた。「顔の表情が難しい。仕事があれば若い者が骨を折って働き、酒食があれば年上の人にすすめる。さてそんな形の上のことだけで孝といえるかね。」まあ言えないんだろうね。 

  形だけのことでは孝とはいへないと孔子のたまふ(さ)にあらむかな

『徒然草』226段 けっこう有名な段である。平家物語の作者を指している。信濃前司行長だが、後鳥羽院の時に五徳の冠者と異名に呼ばれるのを恥じて、学問を捨て遁世した。慈鎮和尚(慈円)はそれを不憫と思い扶持をして助けた。この行長入道が平家物語を作り、盲目の生仏に語らせた。比叡山の事、義経の事は詳しいが、蒲冠者についてはよく知らなかったから多くを記していない。その生仏の声を、琵琶法師が学んだということである。平家物語の誕生秘話というところか。どうもこれも薀蓄だな。

  信濃前司行長こそが『平家物語』をつくりしと兼好は説く結構詳し

2023年12月8日(金)

太平洋戦争が真珠湾からはじまった日。あれから82年経つ。この国の決定的な間違いの初めの日。今日も青空、よき日である。

  十二月八日この日に開始する愚かなる滅びへと向かふこの国

  紅葉と黄葉を混じ枯れ落葉若きさくらは周囲(めぐり)彩る

  わが足の踏みたるもみぢ色判らずかさこそ乾く枯れ落葉踏む

  老いが発する魑魅魍魎のやうな声丑三つ時は夢に苦しむ

永井荷風作『すみだ川・新橋夜話』(岩波文庫)読了。表題の作品の他に「深川の歌」を加えた一冊である。これがなかなかよかった。外遊から帰ったあたりから、明治末年、大正初年におよぶ荷風の古い作品である。どれも時代を伝えておもしろい。花柳界を中心にした物語だが、荷風が書くと当時の東京がその空気感とともによみがえってくる。立体的なのだ。これこそ江戸の情調なのであろう。荷風はいいなあ。楽しい時間であった。
『論語』と『徒然草』はお休みです。『論語』は読みはじめたばかりですし、『徒然草』は、そろそろ最終盤にかかっているのですが。