2023年11月9日(木)

今日から妻は福島へ。母は三日間デイケアに。むすこがきている。
昨日のことだが、

  国立がんセンター中央の威容に愕くその高層に

  築地には日比谷からタクシー。なつかしき江戸の町を過ぎつつ

  午前五時いまだ暗きに出かけたる妻のすがたも闇の中なる

  スーツケースを引きつつ駅へまつくらな空のもとゆく妻にしあらむ

『老子』下篇79「天道は親無し、常に善人に与す。」(天の道―自然のはこびかた―にはえこひいきはない。いつでも善人の見方だ。)

  善人に与するといふ老子の言なるほどとおもふ『老子』読みつつ

『徒然草』187段「大方の振舞・心づかひも、愚かにして慎めるは、得の本なり。」

  愚かにして慎めるがよしといふ兼好、善人に与するといふ老子といづれ

2023年11月8日(水)立冬

築地の国立ガンセンターに行ってきた。行きは東京メトロ千代田線直通の準急に乗って座っていたからいいけれど、帰りは代々木上原から立ちっぱなし、混雑していた。ガンセンターの診察に時間がかかって通勤時間に出っくわしてしまった。

  三日月に宵の明星、高く浮かぶ暁闇(げうあん)の空十一月八日

  まだ寒き通勤準急杖つけば優先席にしたり顔して

  まつくらなる海老名の町になれしたしむ三十年ほど住みたるがゆゑ

しかし、病院でほんとうに長く待たされた。愕くほどだ。帰宅してから、疲労でなにもできない。

2023年11月7日(火)

タクシーを使って海老名総合病院へ。紹介状を受けとる。疲れた。

  空中がうす紫に明けてゆく雲多きけさ異常なる色

  空見ればうす紫色に雲塊の染まればまぼろしの国のやうなり

  久々に杖に拠りつつ歩みけり総合病院を紹介状を手に

  北方に大きな虹の架かるみゆやうやく雨の上がりたるかも

『老子』下篇78「天下水より柔弱なるは莫し。」

『徒然草』185段 城陸奥守安盛のエピソード「道を知らざらん人、かばかり恐れなんや。」 186段 乗馬の秘訣

  馬ごとにこはきものなり吉田といふもの秘蔵のことあり

2023年11月6日(月)

今日も暑い。

  公孫樹の葉あかるくなれば校庭も明るしサッカー小僧ら走る

  公孫樹並木をゆくとき臭ふ銀杏を翁と媼がかまはず拾ふ

  銀杏の葉色づく並木を妻と歩むふたり手をとり歩みゆくなり

『老子』下篇「(ここ)を以て聖人は、(な)すも(しか)(たの)まず、功成るも而も(お)らず。其れ(けん)(あら)わすを欲せず。」(聖人は、大きな仕事をしても、それに頼ることはせず、りっぱな成果があがっても、その栄光に居すわったりはしない。そもそも、自分のすぐれていることを人前であらわすことを好まないのだ。)

『徒然草』184段 松下禅尼は「ただ人にはあらざりける」

  相模守時頼の母倹約を本とする聖人に似てただ人にあらず

2023年11月5日(日)

まあまあいい天気である。

  薬剤を服用せむと水を汲む浄水にして良き水を汲む

  一服にああこの世界にわれ在るをたしかめてゐる水の冷たさ

  この世から他界へつながる坂上る出雲(いづも)国(のくに)の伊賦(いふ)夜坂(やのさか)を

中上健次『千年の愉楽』を読む。やっぱり中上健次はいい。オリュウノオバ、路地の産婆だが、その目から見た「中本の一統」の血、暴力と早死の系譜が小説の内容だ。文章がいい。露地と他界が混在したかのような祈りが、お経のような文体で綴られる。半蔵、三好、文彦、オリエントの康、新一郎、達夫と早世の顛末が語られる。

  生に重きオリュウノオバに語られて路地の物語よし中本の血よし

『老子』下篇76「強大なるは下(しも)に処(お)り、柔弱なるは上(かみ)に処る。」
『徒然草』183段

  人觝(つ)く牛、人喰ふ馬、人喰ふ犬いづれも咎あり律のいましめ

2023年11月4日(土)

今日も暑い。

  遠くより人夫来りて工事するけふはうるさき土盛多し

  さくら葉の紅葉(もみぢ)したるを拾ひにゆく小さな公園のわかき花の木

  さくら紅葉スケッチブックに写したり赤き色鉛筆あまた使ふ

昔むかし弘文堂書房というところから出ていた現代短歌叢書の一冊、第九巻を古本屋から手に入れた。1940(昭和15)年のものだ。薄いが五島茂、柳田新太郎、前川佐美雄、坪野哲久、五島美代子がそれぞれ二百首ほど選んでまとめたものである。
    前川佐美雄から二首、
    春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ
    あかあかと硝子戸照らす夕べなり鋭きものはいのちあやふし
    坪野哲久から一首、
    曼殊沙華するどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべき

2023年11月3日(金)

明治節だ。明治天皇の誕生日だ。天気はいい。暑いくらいだ。剣道の日本一が決まる。

  目の前をひよどりが飛ぶ左から右へ飛びゆく短く鳴きつ

  ひよどりの短き声が愛らしくぴいよぴいよと鳴きつつ飛べり

  工事車のけふは休日にもかかはらず二、三台来てゐる土掘る音す  

『老子』下篇75「(そ)(た)だ生を以て為すこと無き者は、是れ生を(たつと)ぶより(まさ)る。」

  為政者へもの申しける老子翁人民が飢えたるは税が多すぎるゆゑ

『徒然草』181段「『ふれふれこゆき、たんばのこゆき』、『たまれ粉雪』と言ふところを、誤りて『たんば』とはいふなり」という。182段 鮭の白干しは誤りではない。  

  四条大納言(たか)(ちか)卿なでふ事かあらん鮭の白干し