雨が時折、そしてずっと降る。
はげしく降る雨、風増して三川のそれぞれの川濁流をなす
雨、風のはげしくなれば川水の暈増えてただ濁流をなす
濁流に流るる木々の幹にある木川はがれてただの丸太か

雨が時折、そしてずっと降る。
はげしく降る雨、風増して三川のそれぞれの川濁流をなす
雨、風のはげしくなれば川水の暈増えてただ濁流をなす
濁流に流るる木々の幹にある木川はがれてただの丸太か

外は暑いらしい。リハビリ。
うろこ雲。龍のかたちにつらなりて朝焼け色に染まり流るる
小鷺二羽、雌雄わかねど黄金の垂り穂の田んぼに降りてくるなり
あのビルのむかふに始祖鳥がはばたけば人間はいつか鬼に化したり

今日も病室の窓を見ている。
いかづちのときに閃く。雷神は激しく雨風を地上に降らす
赤ちゃうちんをかぞえつつバスに阿佐ヶ谷へゆくとき父のあたたかき香よ
窓からの巨大ロジテック群白き雨にかすむやうなり遠く見えつつ

病院の窓を雲がゆく。
暁烏けさも鳴きつつ移りゆくねぐらより出で田のうへを飛ぶ
あけがらすけさも早くに鳴きだしていづくゆくらむ町めぐりをり
メキシコのアステカ神を写しゆくいつしか魔法にかかりしごとく

今日も外は暑いのだろう。
朝がらすたけだけしくも鳴きさわぐ。稲田に垂り穂、風に鳴るとき
黄金の稔り田にしづかに降りてくる来臨を待つ南無阿弥陀仏
雲を吐きジェット機西へ飛びゆけり青空に少なき雲を避けつつ

外は暑そうだ。病院内はエアコンが効いている。退院だ。
鷺五羽が鳴きつつ田圃の畔に降りる稲穂稔れるえびなの田へと
ひよどりは速度落して飛びゆけり黄金の田を睥睨しつつ
続々と畔に降下す。稔り深き海老名田圃をおのおのめぐり

堀田善衛『方丈記私記』を読む。いい本だ。1945年、大空襲の際、そこあったのは「感情の、一種の真空状態」だった。しかし「実は私氏自身の内部において、天皇に生命のすべてをささげて生きる、(略)戦慄をともなった、ある種のさわやかさというものも、同じく私自身の肉体のなかにあった」。長明が生きた時代、「朝廷一家が、あたかも鵺ででもあるかのように、ぬらりくらりと危機を乗り越えて行くものであ」り、まさに「古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。ありとしある人は皆浮雲の思ひをなせり」であった。その他いろいろ。鴨長明は意外に凄いのだ。堀田善衛もまた凄いのだ。
東京の下町を焼く大空襲。長明の『方丈記』あれこれ気になる
古京荒れて新都はいまだ成らざるにひとは浮雲のごときとおもふ
古典とは異なるものの面妖さ『方丈記』読む。つぶさに読める
入院中。しばらくすると歌が消える。休息である。
