病室は五階の端、窓側である。秋の田が見える。
かろやかに小雲ひむがしへ流れゆくこの軽やかさ秋のものなり
穂の垂れて刈りしほ近しこの秋もたけてゆくなり黄金の田に
この日ごろ黄金の田に穂の重く刈りしほ近く秋もたけゆく

病室は五階の端、窓側である。秋の田が見える。
かろやかに小雲ひむがしへ流れゆくこの軽やかさ秋のものなり
穂の垂れて刈りしほ近しこの秋もたけてゆくなり黄金の田に
この日ごろ黄金の田に穂の重く刈りしほ近く秋もたけゆく

入院の日だ。
いくつかの歌集原稿用意して病室に持ちこむ完成稿を目指し
プリンターに打ち出す歌集の数枚を読みこむたびに旅をし思ふ
旅へ行く歌多くして第六歌集読み返すたびその旅おもふ

迢空忌。朝方は涼しいのだが、暑いのに変わりはない。
紙垂四枚垂らして神棚あでやかなり祈りささげむ地の霊たちに
石上ふる鈴振りて、いにしよをひらくがごとき鶏の鳴き声
地の霊など九月一日の碑に呼びて百年の後祈りささげむ

暑い。問診のため海老名総合病院へ。明後日の入院の前段である。
昨夜、砂原浩太朗のデビュー作『いのちがけ 加賀百万石の礎』を読み終える。前田利家の股肱の臣、村上長瀬のまあ一代記といっていいだろう。利家歿後まで長瀬の活躍をえがいて、なかなか充実した読書であった。
前田利家、股肱の臣の村上長瀬。利家亡き後もいのちがけなり
前田利家 黄金の羽織りの傾奇者。いのちがけなるもののふの伝
ものふの一代記読みをり。痛快なり。いのちがけなるふるまひ楽し

今日から9月。4日にはまた入院だ。暑さは変わらない。
西の空にスーパームーン残りをり満月大きくかがやく朝に
まみどりの樹のけさことにかがやきてスーパームーンことほぐごとし
朝烏けたたましくも鳴きはじめ二羽、三羽追ふこゑに鳴きつつ

暑い、暑いのだ。
けやきの葉のさやさや声。ささやきの聴こゆるときをわが歩みゆく
エアコンの室外機に夜の明滅が映るひかりの反射寂しき
咳止めに吸入せむか日に二回コロナの後を安らぐために
小豆バー冷たき氷菓頬張りて暑さの夏を越へむとしたり

今日も暑い。リハビリが来るが、来週また入院だ
九階のベランダに来てゐる蜻蛉のその名覚えず黄色の胴体
みんなみの夕焼け雲のあかね色かへるとうたふ烏をりにき
山の上に入道雲の湧きだせる夏の山いつまでもあかね色して
