今日も暑いのだ。
朝の日に影ながながとあけぼの杉生気さかんなれば風に揺れをり
をかしをば人生ひとつの目的としあれこれ言はん兼好頼りに
をかし、あはれをこの軀にまとひ刻々と退院以後の日々を過ごさむ

今日も暑いのだ。
朝の日に影ながながとあけぼの杉生気さかんなれば風に揺れをり
をかしをば人生ひとつの目的としあれこれ言はん兼好頼りに
をかし、あはれをこの軀にまとひ刻々と退院以後の日々を過ごさむ

暑い。総合病院でMRIを受ける。
田中貴子の本で印象に残った『和漢朗詠集』。中の和歌一首と漢詩。藤原義孝の作である。義孝は藤原伊尹の子、行成の父。容姿端麗で道心の深い貴公子であった。
秋はなほ夕まぐれこそただならぬ荻の上風荻の下露 229
朝に紅顔あつて世路に誇れども/
暮に白骨となつて郊原に朽ちぬ 794
さてさて藤原義孝の歌なるか下の句の対句好ましきもの
麗景殿女御早くに死にたるを惜しみつつ藤原義孝寂しむ
離婚病というものがある。
恋ひわびてよなよなまどふわがたまはなかなか身にもかへらざりけり 藤原能宣
思ひあまりいでにし魂のあるならむ夜ぶかく見えば魂結びせよ 『伊勢物語』110段
たましひのわが軀を離れ遊ぶときこのたましひのはなやぐものを

暑いことに変わりない。田中貴子『いちにち、古典 〈とき〉をめぐる日本文学誌』読みつつ、
朝に生れて暮に死す。われらみなひとしなみに死は避けやうもなし
彌彌丸の悪鬼に遭ひて死にするに満済准后あはてたりけり
腐れ屍あちこちにある中世の京都をおもふ妖しきものを

今日も朝から暑い。春杜くんのお宮参り、赤坂の日枝神社だそうで妻は早くにでていった。
持国天に踏みつけられし邪鬼の顔どこかに喜びの表情うかぶ
高き搭、興福寺五重塔を仰ぎみるわれら小さき人間ならむ
汗の香をたたふる木綿のTシャツを着てゆくは地蔵の盆近き夜

今日も暑い。雨もない。
リハビリの師にしたがひてスクワット十五回わが軀よいつよみがへる
ことばのままに足を上下に腰をあげ訪問介護にぶざまをさらす
蟬のこゑこの頃聴かずと話しすればたちまちどこからか油蟬鳴く

あいかわらず暑い。一年に一度の胸の心臓ペースメーカーの診察の日だ。
尾根の雲のみにひかりある山の暮れ午後五時過ぎて盆の死者帰る
盆の死者もいつかは帰る茄子の馬にまたがる父が頬笑みかへす
鶏の声まつたく聴こゑず夜が明けるこの世泰平なるかさうではあるまい
小学校四年の新学期に東京の練馬から神奈川県の厚木に越した。
舌だみし厚木のことばに驚けり五十七年まへ「べい」のつく語

朝から激しい雨。たちまち上がるものの暑い。
紀伊半島に上陸したる台風の影響微々たり安堵せりけり
雨ふれば車道はいまだ乾かざる自動車通るもしづかなりけり
台風七号の影響か雨ふれば盆の日なれど車少なし
