2023年8月1日(火)

暑いのだ。夜中、雷鳴、そしてひかりが激しかった。

  雷鳴とひかりきらめく夜の暗さたびたび醒めてカーテン閉めつ

  夜通しを風神、雷神ひらめけばベランダしづかに雨の跡のみ

とつぜん雷鳴が響き、しばらく停電。

  蟬一匹と蟬の翅一匹ぶんベランダに残して暗き海老名の空は

2023年7月31日(月)

今日もまた暑いのである。妻は勤めへ。

  いづこかにどくだみの花のにほふとき悪意ありけり男とをみな

  なかなかに足もと不如意。わがからだ悪性リンパ腫にコロナ重なる

  昔男のものがたり読むもののふの八十氏川にいさよふ流れ

  宇治川の流れぞはやきこの橋に投げ節つぶやく翁ありけり

2023年7月30日(日)

今日も暑いのだ。

  鼻提灯しづかに破れ目覚めたり。マスクのうちときに塩つぽくなる

  コロナに罹りけふで五日目。咽喉深くまだがざがざの取れることなく

  熱はもう早くに去りて、ただ発話と歩くことのみいまもままならず

真木悠介『うつくしい道をしずかに歩く 真木悠介小品集』(河出書房新社)、一応読了。
まだ若い日の小品集である。訳詩を一篇、パラマハンサ・ヨガナンダのことば。
からだは溶けて宇宙となる/宇宙は溶けて音のない声となる/声は溶けていちめんの輝きとなる/そして輝きはかぎりない歓喜の胸に抱かれる

  このからだ溶けて宇宙の声となりいちめんかがやき歓喜に抱かる

  乾坤のひかりに溶けてよろこびの胸に抱かれるこの詩を愛す

2023年7月29日(土)

暑い、暑い。小山俊樹『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」』(中公新書)読了。これまたおもしろかった。五・一五事件にかんしては保坂正康『五・一五事件』しか知らない。橘孝三郎と愛郷塾を中心にしたもので、事件そのものを扱ったものではない。この新書が、海軍将校を直接書き記したものとしてははじめてかもしれない。満州で亡くなってしまった藤井(ひとし)を中心に取り上げたのも本書が初であろう。犬養を直接撃ち殺した三上卓についても詳しくふれている。
・選挙終へし後の怒りのしづまらぬ
・おくれても おくれても又君達に 誓ひし言葉 われ忘れめや
三上卓の俳句と短歌である。

  昭和戦前、政党政治が最後になる五・一五事件の首相暗殺

  殺されし犬養(つよき)の「話せばわかる」、「問答無用」は首謀者の語

  結局は死刑者出でず。おほかたの被告は刑を減じられたり

  生きのびて戦争・戦後の世の中をただいつしんに三上卓ゆく

2023年7月28日(金)

よく晴れて暑いようだ。朝早くからエアコンを使う。

  野の道を歩くといふこと憧れや幻想消へてもなほあるきつづける

  淋しさや苦さをともになほ歩む野の道のうへひたすらにゆく

  あはれなる夢の爺さん。酔ひさめても夢をみてゐる路傍に坐る

2023年7月27日(木)

母が家へ帰ってきた。母はまた、ずいぶんぼけている。今日も暑い。

夜の闇がつくった一首。これも季節外れか。

  腰高に拾ふは沙羅の花にして浄らなる白、天上の花

真木悠介『うつくしい道をしずかに歩く』(河出書房新社)読みはじめ。

  老いた日にしづかに私は歩くだらうこのうつくしき道のゆくまま

三日前、大戸屋から弁当食材をとった。

  野菜黒酢、鶏肉黒酢似たやうなる味覚たのしむ甘やかなりし

2023年7月26日(水)

夜、くらがりで妻に書きとってもらう。季節がずれているが。

  春の日に途方に暮れて立つくす二、三分咲きの花のもとにて

22日から今までコロナの妻と私に、もっとも献身的な手当てを行なっていた娘が今日からいない。

  コロナ禍に罹りくるしむ妻の(み)を真摯に娘は看病したり

尾崎真理子『大江健三郎の「義」』(講談社)読了。大江の小説には、隠れた三本の柱があるという。柳田國男であり、島崎藤村、平田篤胤である。西洋の知性に格闘した大江を含む四人の日本人を追って、いやあ実におもしろかった。柳田、藤村を繋ぐのは平田国学であり、奇妙このうえもない。

  大江健三郎が柱にしたる國男、藤村、篤胤いづれも田舎びとなり

  藤村の『夜明け前』読みしは幾年まへ圧倒的なる青山半蔵