暑いのだ。夜中、雷鳴、そしてひかりが激しかった。
雷鳴とひかりきらめく夜の暗さたびたび醒めてカーテン閉めつ
夜通しを風神、雷神ひらめけばベランダしづかに雨の跡のみ
とつぜん雷鳴が響き、しばらく停電。
蟬一匹と蟬の翅一匹ぶんベランダに残して暗き海老名の空は

暑いのだ。夜中、雷鳴、そしてひかりが激しかった。
雷鳴とひかりきらめく夜の暗さたびたび醒めてカーテン閉めつ
夜通しを風神、雷神ひらめけばベランダしづかに雨の跡のみ
とつぜん雷鳴が響き、しばらく停電。
蟬一匹と蟬の翅一匹ぶんベランダに残して暗き海老名の空は

今日もまた暑いのである。妻は勤めへ。
いづこかにどくだみの花のにほふとき悪意ありけり男とをみな
なかなかに足もと不如意。わがからだ悪性リンパ腫にコロナ重なる
昔男のものがたり読むもののふの八十氏川にいさよふ流れ
宇治川の流れぞはやきこの橋に投げ節つぶやく翁ありけり

今日も暑いのだ。
鼻提灯しづかに破れ目覚めたり。マスクのうちときに塩つぽくなる
コロナに罹りけふで五日目。咽喉深くまだがざがざの取れることなく
熱はもう早くに去りて、ただ発話と歩くことのみいまもままならず
真木悠介『うつくしい道をしずかに歩く 真木悠介小品集』(河出書房新社)、一応読了。
まだ若い日の小品集である。訳詩を一篇、パラマハンサ・ヨガナンダのことば。
からだは溶けて宇宙となる/宇宙は溶けて音のない声となる/声は溶けていちめんの輝きとなる/そして輝きはかぎりない歓喜の胸に抱かれる
このからだ溶けて宇宙の声となりいちめんかがやき歓喜に抱かる
乾坤のひかりに溶けてよろこびの胸に抱かれるこの詩を愛す

暑い、暑い。小山俊樹『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」』(中公新書)読了。これまたおもしろかった。五・一五事件にかんしては保坂正康『五・一五事件』しか知らない。橘孝三郎と愛郷塾を中心にしたもので、事件そのものを扱ったものではない。この新書が、海軍将校を直接書き記したものとしてははじめてかもしれない。満州で亡くなってしまった藤井斉を中心に取り上げたのも本書が初であろう。犬養を直接撃ち殺した三上卓についても詳しくふれている。
・選挙終へし後の怒りのしづまらぬ
・おくれても おくれても又君達に 誓ひし言葉 われ忘れめや
三上卓の俳句と短歌である。
昭和戦前、政党政治が最後になる五・一五事件の首相暗殺
殺されし犬養毅の「話せばわかる」、「問答無用」は首謀者の語
結局は死刑者出でず。おほかたの被告は刑を減じられたり
生きのびて戦争・戦後の世の中をただいつしんに三上卓ゆく

よく晴れて暑いようだ。朝早くからエアコンを使う。
野の道を歩くといふこと憧れや幻想消へてもなほあるきつづける
淋しさや苦さをともになほ歩む野の道のうへひたすらにゆく
夢
あはれなる夢の爺さん。酔ひさめても夢をみてゐる路傍に坐る

母が家へ帰ってきた。母はまた、ずいぶんぼけている。今日も暑い。
夜の闇がつくった一首。これも季節外れか。
腰高に拾ふは沙羅の花にして浄らなる白、天上の花
真木悠介『うつくしい道をしずかに歩く』(河出書房新社)読みはじめ。
老いた日にしづかに私は歩くだらうこのうつくしき道のゆくまま
三日前、大戸屋から弁当食材をとった。
野菜黒酢、鶏肉黒酢似たやうなる味覚たのしむ甘やかなりし

夜、くらがりで妻に書きとってもらう。季節がずれているが。
春の日に途方に暮れて立つくす二、三分咲きの花のもとにて
22日から今までコロナの妻と私に、もっとも献身的な手当てを行なっていた娘が今日からいない。
コロナ禍に罹りくるしむ妻の軀を真摯に娘は看病したり
尾崎真理子『大江健三郎の「義」』(講談社)読了。大江の小説には、隠れた三本の柱があるという。柳田國男であり、島崎藤村、平田篤胤である。西洋の知性に格闘した大江を含む四人の日本人を追って、いやあ実におもしろかった。柳田、藤村を繋ぐのは平田国学であり、奇妙このうえもない。
大江健三郎が柱にしたる國男、藤村、篤胤いづれも田舎びとなり
藤村の『夜明け前』読みしは幾年まへ圧倒的なる青山半蔵
