2023年3月21日(火)

朝から雲が厚い。

  みづきの冬木の枝にすずめゐてぴちゅくぴちゅくとわれ呼ばれゆく

  わが佇てる近くの枝をゆすりつつ雀鳴きをり小さな一羽

  木蘭の樹下はなびらをあまた落しあはれ無惨に花びらの散る

  をちこちに辛夷、もくれん春の花白きが咲きてうすら寒き日

  駐車場に枝張りだせる染井吉野(なか)(え)下枝(しづえ)に花付けはじむ

  鶯やいまだ越侘(こしわぶ)ぶこの地には春の囀りとどかざりけり

越侘は、「山、川、関所などを越えることができず、それを残念に思う。越えるのに困難を感じる」ということ。先日、山間の森にいた若い鶯だが、山を降り、川を越し私の住むあたりまでは、まだ越してこられないのだ。

2023年3月20日(月)

朝から春らしい青天、相模川の鴨は少数だがまだ残っている。

  晴朗なるあかるき朝の空に鳴く一羽の鳥の濁みたるひと声

  朝の日はさみどり色の野を照らすこの平穏の時よ長かれ

  朝の日はひかりまばゆし駅へむかふ人の背中の誰もかがやく

  川淀に残る鴨どりもいつか去るそのいつかさう遠くはあらず

  木蘭の風になぶられ純白の花びら散らばるあはれ汚れて

2023年3月19日(日)

朝から快晴。父の墓へ春の掃苔。

  山(がは)の窪地に大き枝垂れざくら頃合ひに咲き日にあたたまる

  しづかなる山(あひ)の墓。並び立つ墓石を縫うてわが父のもとへ

  墓石に水を流せば父の名のくきやかに見ゆ山の奥墓

  父の名が刻まれしのみに三十余年墓石(さ)びたる色合ひもよし

  墓の前に手を合はすとき鶯の稚拙なるこゑひと鳴き聴こゆ

2023年3月18日(土)

朝から雨である。そして寒い。

  モクレンの花咲き盛りいく片か花びら夕べ風に落ちたり

そして今朝からの雨。

  はなびらは全方向に落ちてゐる昨夜暴威の吹き荒れたるか

  九階より見下ろす白蓮の花びらの開き切りたるが雨に打たれつ海棠の花のつぼみも濡らしつつ春の雨ふる冷たき雨が

2023年3月17日(金)

午前中は晴れ。

  午前五時半 中庭(パティオ)はいまだ暗くしてひよどりの声しきり鳴きをり

  くらがりに街灯のひかりうつすらと白木蓮の花うかびくる

隣町へ橋を渡る。鴨が少なくなっている。

  おそらくは昨日のうちに飛び立ちしあゆみ橋下鴨の数減る

2023年3月16日(木)

朝から晴れ。外は暖かだが、部屋の中はいささか寒い。

  朝の日を蒐めて明るきあけぼの杉枯木(かれこ)(だち)なれど枝に赤き芽

  春コートまとふてわたる相模川冷たき風が橋梁を吹く

  数少し減りたるやうに水のうへ残る春鴨喜々としてゐる

  九階のベランダにやや大きめの銀蠅が来てぶきみに光る

『老子』下篇69

  『老子』の兵法言も逆説に「哀しむ者勝つ」至言なるかも

『徒然草』158段

  飲み助のたしなみを説くか盃の底に残せる酒はなにゆゑ

2023年3月15日(水)

よく晴れているが、いささか冷たい。

  うすら寒きこの朝も木蘭の花のもとコートのポケットに手を入れて(あ)

  茶の樹皮のささくれて春の沙羅の木の枝にみどりの芽のあまた付く

  つばきの花つぎつぎ落ちて公園の一隅 赤き異世界のごと

舟久保藍『天誅組の変 幕末志士の挙兵から生野の変まで』読了。時間軸に沿った記述で変の概要がわかる。生野の変では、ほとんど戦闘らしいものがなかったこともはじめて知る。高校一年の夏、初めての一人旅は、河内長野の観心寺の楠木正成の首塚から五條、吉野をめぐる天誅組を追う旅であったことが思いだされる。

  夏の日を河内の国の観心寺楠木正成の首塚のまへ

  首塚の五輪塔に手を合すまあ偏屈な少年なりき