爽やかな朝だった。やがて25℃、夏の雲。だんだん雲が増える。
蛇口より下垂る水のいつしかに冷たく感ず秋が来てゐる
目玉焼きにミニトマト添へ朝食はフランスパンを爺よろこぶ
四十雀鳴きつづけをり秋の昼

爽やかな朝だった。やがて25℃、夏の雲。だんだん雲が増える。
蛇口より下垂る水のいつしかに冷たく感ず秋が来てゐる
目玉焼きにミニトマト添へ朝食はフランスパンを爺よろこぶ
四十雀鳴きつづけをり秋の昼

朝から雨が上がり、青空が覗く。昨夜というか午前1時ころ目醒めてカーテンの隙間から窓の外を覗く。
雨に濡れ車の尾燈の赤き色疾走してゆく闇を目に追ふ
案山子祭り
田の中に降りてへうげて案山子どの稲の葉いまだ青きが残る
桃の実やけふは熟れたる神棚に

曇り空だが、暑くはない。川向こうの隣町へ買物に。
手もとから落ちたる包丁が足を刺す夢醒めてしばし痛みを覚ゆ
夢みればおほかた悪夢 鬱屈のあれば一杯の水を飲み干す
狂気秘めて街衢を歩む男ひとり背黒鶺鴒わが前をゆく

朝は爽やかだった。昼過ぎには28℃。夏が戻ってきたようだが、植生は秋を示している。
萩に風はげしく揺れてわが行く手遮るやうに枝絡みあふ
白萩もまじへ萩くさゆれてゐる乃木大将の死にたる日なり
萩ゆれて昔の恋の捨てどころ

今朝の「天声人語」に金木犀がすでに香りはじめていることを知るものの、このあたりではまだだろう。金木犀の木が少なくなっている。私にとって金木犀の香りは、一人の死者を思い出させる。鈴木正博。『海山の羇旅』の歌人である。学生時代からのわが親友であった。金木犀の花の香るころに急逝した。クモ膜下出血、突然であった。37歳。27年前になる。ああ。
「天声人語」には俳句が紹介されていた。「木犀をみごもるまでに深く吸ふ」文挾夫佐恵
木犀の花の香りに遠ざかり一人の死者のおもかげを追ふ
木犀の香りに深く息を吸ふいのちをみごもるまでに息吸ふ
「日曜美術館」はルーブル美術館。
聖女マグダラのマリアの像は手を合はすわれもいつしか手を合はせをり

ニューヨークの同時多発テロ事件から20年。あの日は定時制での仕事を終えて、珍しく飲まずに帰宅した。旅客機が高層ビルに突入するその瞬間をテレビで見ることになった。言葉を呑んだことを今でも覚えている。
六十五年ただ茫洋と生きてきて忘れがたきことのひとつかこれも
週に三度の掃除機による清掃。
三部屋を念入りに掃除機かけて後の疲弊深きは老いの証しか
絨毯は湿気を帯びて掃除機に吸へば重たし老いにはしんど
秋虫や昼にも鳴けば雨降り来

真夏の空がもどってきた。午後2時、29℃。
田の畔にひとり仰げる青空に侵入してくる夏の雲たち
今日は私が夕食の当番だ。
包丁をにぎれば時の間シェフになるまづはじやがいも皮むく芽とる
人参をきざみながらもこの後の段取り案ずたのしきろかも
