2021年4月11日(日)

  くすのきもことしの若葉に(をち)若反(かへ)りいのち明るむ一樹立ちたり

ひさびさに『大和 長谷寺』を開きそのモノクロ写真を眺めた。本尊十一面観音の巨大な足が心に残る。「往昔平安の女性たちは、この妖しいまでに雄渾な力量感に、つよい魅力と神秘の恍惚境も感じたのでなからうか。」

  この頃は保田與重郎をよく憶ふ與重郎が書きし大和に行きたし

  長谷寺の参道の店ににうめんと草餅を食ひし師走ありにき

2021年4月10日(土)

朝方は曇っていたが、やがて青空がひろがるものの、今日も寒い。散歩にはコートを羽織る。

  さねさしの空は曇天中庭の苔もどんよりわれもしんみり

  れんげ田のはるかの山の尾根のうへ富士ケ()みゆる白雲(はくうん)()きて

  れんげ田にひかり満てりけり紋白蝶三頭戯る春の楽園(パライゾ)

蝶は、なんで頭と数えるのだろう。

2021年4月7日(水)

ハナミズキの花があっちにもこっちにも咲いている。やはり暖かいのだろう今年は早い。

  枝先に四枚の白き花ひらくみづきの木並ぶ春の新道

  けさほどは鴉のこゑに目覚めたりからすなぜ鳴くうるさいぞからす

  相模河原に鷺帰り来る。しばらく見ぬコサギ四羽がわが上を翔ぶ

2021年4月5日(月)

今日は脳外科病院でCTを撮り、診察。少しづつよくはなっている。

  春風に天に浮遊す。みづきの花はかなき白は死者の色なり

青山文平『泳ぐ者』読了。これまたハードな時代小説であった。二つの事件の複雑な真相を解いてゆく道すじにもてあそばれているかのようである。

  風呂の鏡につくづくと視るこの貧相湯気に歪めるこの痩せ男