くすのきもことしの若葉に変若反りいのち明るむ一樹立ちたり
ひさびさに『大和 長谷寺』を開きそのモノクロ写真を眺めた。本尊十一面観音の巨大な足が心に残る。「往昔平安の女性たちは、この妖しいまでに雄渾な力量感に、つよい魅力と神秘の恍惚境も感じたのでなからうか。」
この頃は保田與重郎をよく憶ふ與重郎が書きし大和に行きたし
長谷寺の参道の店ににうめんと草餅を食ひし師走ありにき

くすのきもことしの若葉に変若反りいのち明るむ一樹立ちたり
ひさびさに『大和 長谷寺』を開きそのモノクロ写真を眺めた。本尊十一面観音の巨大な足が心に残る。「往昔平安の女性たちは、この妖しいまでに雄渾な力量感に、つよい魅力と神秘の恍惚境も感じたのでなからうか。」
この頃は保田與重郎をよく憶ふ與重郎が書きし大和に行きたし
長谷寺の参道の店ににうめんと草餅を食ひし師走ありにき

朝方は曇っていたが、やがて青空がひろがるものの、今日も寒い。散歩にはコートを羽織る。
さねさしの空は曇天中庭の苔もどんよりわれもしんみり
れんげ田のはるかの山の尾根のうへ富士ケ嶺みゆる白雲貫きて
れんげ田にひかり満てりけり紋白蝶三頭戯る春の楽園
蝶は、なんで頭と数えるのだろう。

今朝は寒かった。
みどり葉にかたち調へメタセコイア夏にそなへて直立ちにけり
いつせいに木々の芽吹きのはじまれば町も踊りだすみどりの色に

朝の空ぽぽぽぽぽぽと春の雲四月八日はお釈迦さまの日
虚子の忌につつじの花も咲きにけり
天の雲に応ずる如くみづきの木枝に四片の花咲かせをり

ハナミズキの花があっちにもこっちにも咲いている。やはり暖かいのだろう今年は早い。
枝先に四枚の白き花ひらくみづきの木並ぶ春の新道
けさほどは鴉のこゑに目覚めたりからすなぜ鳴くうるさいぞからす
相模河原に鷺帰り来る。しばらく見ぬコサギ四羽がわが上を翔ぶ

春はここにもくる。
樹の活気よわる欅も枝先にみどりの小さき葉を揺らしをり
山の表に朝の日あたり落葉樹の葉むらの色かみどりあかるむ

今日は脳外科病院でCTを撮り、診察。少しづつよくはなっている。
春風に天に浮遊す。みづきの花はかなき白は死者の色なり
青山文平『泳ぐ者』読了。これまたハードな時代小説であった。二つの事件の複雑な真相を解いてゆく道すじにもてあそばれているかのようである。
風呂の鏡につくづくと視るこの貧相湯気に歪めるこの痩せ男
