2022年5月13日(金)

録画してあった三島由紀夫に関する二本のNHKのドキュメンタリーを観る。川端康成との軋轢を描いたものと三島事件の日を検討したもの。どちらも多くは知っていることだが、おもしろかった。こんなことばが拾われている。「英雄として死ぬか、文豪として死ぬか」。川端がノーベル文学賞を取ることによって三島は英雄の死を選んだ。そして、これはドキュメンタリーの主張ではないが、1970年の三島の死は、25年後の殉死ではなかったか。昭和天皇にではない。きわめて抽象的な日本の伝統と文化への殉死。そう考えると少しだけだが、分かったような気になるのだが……

三島由紀夫その死の謎をいくたびもいくたびも問ふ「殉死」あるべし

川端と三島にありし確執をおもへば人は他愛なきもの

2022年5月12日(木)

5月8日に韓国の抵抗の詩人(キム)()()が亡くなったという。享年81。また一人、人類の抵抗体が失われた。今朝の「天声人語」は、その金芝河にふれている。

キム)()()よ いまこそ抵抗の(とき)なるにあの世から送れたましひの詩を

(うづたか)(なづな)の花の咲くところ坐して目つむり息ふかく吸ふ

2022年5月11日(水)

志賀直哉『暗夜行路』を読んだ。学生時代に一度読んでいるが、最後の大山(だいせん)の場面しか覚えていないから、まったく新鮮な気持ちで読めた。主人公、時任謙作は、日本の近代小説特有のダメ男といっていいだろう。もっとしっかりせいよ、と声をかけたくなる。しかし、それこそが「『実存』のうめき」(尾崎一雄)なのだろう。大山での回心はやはり圧倒的なものである。一度読んでいるわりには、けっこう時間を要したが、よき読書でありました。

暗夜行路をためらひ身勝手に生きてゐる時任謙作の苦悩のうめき

大山(だいせん)の夜のたましひにふれたるか生死のさかひをさまよひたるは

2022年5月10日(火)

昨日と違って朝から青天がひろがって山々のみどりが美しい。朝はまだ涼しかったが、ようように暖かくなってきた。頼んでいた三好達治『測量船』(講談社文芸文庫)が届く。

キッチンに小さなちひさなシャボン玉食器洗剤のボトルより飛ぶ

天井にとどく小さきシャボン玉すぐに消え去るシャボンもありき

2022年5月9日(月)

昨日は母の日で、奈良の吉野の柿の葉寿司を妻が用意した。ひさしぶりの柿の葉寿司とちょっとの酒、うまかった。今日は曇りがちで涼しい。

柿の葉寿司の葉をはがし口に頬ばればここはそらみつ大和の国なり

柿の葉は大和五条のものなるか大きく厚く香りある葉は

2022年5月8日(日)

時々自分のからだが自分のものではないような違和感を覚えるときがある。そんなとき左胸をさわると心臓ペースメーカーの植え込まれているところが硬く出っ張っていて気になる。そして、オレはこの肉体に埋め込まれた機械のおかげで生きているのだと深く納得する。つまり、オレはサイボーグなのだ。

少年期のわがヒーローのひとりなるサイボーグ009その超加速力

心臓の動き奪はれわれもまたサイボーグ531奥歯噛みしむ

2022年5月7日(土)

まあまあの日和でしょうか。はがき3通、封書1通をこしらえる。なかなかに難儀でした。

つつじ垣につつじの花の落ちてゐる五月七日の露地をさまよふ

昨夜一日遅れの菖蒲湯に沈む。

ほのぼのと六日のあやめの湯に沈むこの肉体もやがて滅びむ