2022年2月25日(金)

井上荒野『あちらにいる鬼』を読んだ。父、井上光晴とその妻、そして井上の愛人であった瀬戸内寂聴との三人の関係を井上の娘、荒野がえがいた小説だが、凄い。それぞれ白木篤郎、笙子、長内みはるとして描かれ、その不思議な関係が、娘によって、すぐれて濃密にえがかれ、読むものを圧倒する。わたくし不覚にも、笙子の死の場面では、目のふちにじわっと涙を滲ませた。この不自然な愛の形をあらわす小説を何と呼べばいいのだろう。ただただ凄い。

濃密なる小説世界を脱けだせずもんもんと朝のふとんにもぐる

今日は、すこし暖かく感じられる。虫たちは敏感だ。

空中を小さな蟲が浮遊する老いに枯れたるわれをもめぐる

2022年2月23日(水)休日

朝からよく晴れているが、寒い。数日前のNHK「日本百名山」に九州の英彦山登山の様子が映っていた。

英彦山(ひこさん)の岩峰嶮しこころ飛ぶ

古への祈りの峯をはひのぼり岩壁をわがたましひの飛ぶ

洞不全症候群のせいで失神したときのことをときおり思う。

もう死んでしまつてゐるのか喪心の時あればしばしの記憶失ふ

2022年2月21日(月)

朝から風が猛烈に強い。マンションの周囲はまたいちだんと風がふきつけて、風下になると進みがたいほどの風圧だ。朝方、路上の水たまりには氷が張っていた。

薄氷はりたるあさき水たまりぱりんばりりん靴にふみ()

鴨どちは小さき声に鳴きかはし川のながれを右す左す

隊列をときに乱して泳ぎくるカルガモ小さき声に鳴きつつ

2022年2月20日(日)

朝は雨だった。少しずつ雲ははれたものの、寒い。そして夕刻また雨。

なぜだろう。今日は男の子ばかりの保育園児の一団とすれ違う。

()の子ばかりの保育園児がすぎてゆく橋上を不穏なり幼児の一団

挨拶も声にしがたく不穏なり()の子ばかりのこの不自然さ

妖精はあそこににもここにもゐるものを曇天なれば木々に隠れり