2022年6月19日(日)

梅雨のさなかにもかかわらず、まあ良い天気だ。

李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』が文庫になったので早速読んだ。これが凄い小説だった。新宿二丁目を中心にした性の多様性の物語だが、そんなに容易いものではなかった。レズビアン、トランスジェンダー、アロマンテック/アセクシャル、バイセクシャル、パンセクシャル……知らぬことが多すぎる。それらの人間たちの生死を分かつような葛藤が涙ぐましいほどの濃度をもって描かれる。ときにほんとうに涙を滲ませている自分を発見する。ひよっとすると今年一番の本になるかもしれない。呉明益『歩道橋の魔術師』もそうだったが、台湾にかかわる小説家の力を感じさせる。

性のこと、そのむづかしさ。生きがたきおもひありしに、泣けてくるなり

部屋の中をコバエが飛ぶ。

わが家の裏のベランダに置く(なま)(ごみ)コバヘたかりて腐臭を放つ

コバヘをたたきつぶさん。逃げまどふ虫との激闘 夏がはじまる

2022年6月18日(土)

今日もぐずぐずした日である。ただ雨はふあない。礼服を作りに海老名の青木へ。久しぶりに黒服新調だ。

この鷺もいにしへを恋ふ鳥ならむ白きつばさを大きくひろげ

夏つばきの花はたちまち腐れ落つそのいくつかの花を拾へり

枝豆の頭と尻を切り落とす夏の愉楽のやうやうきたる

2022年6月17日(金)

薄曇りがつづき、じめじめとしいている。雨はふらないが、梅雨なんだな。

森鷗外『大塩平八郎』(岩波文庫新版)読了。「護持院原の仇討」、表題作、「堺事件」、「安井夫人」の四編の歴史小説が収められている。いずれも既読のものだが、あらためて、その明朗な文体に感心。「平八郎の思想は未だ醒覚せざる社会主義である。」「平八郎は哲学者である。しかしその良知の哲学からは、頼もしい社会政策も生れず、恐ろしい社会主義も出なかったのである。」(「大塩平八郎」附録)

また、「堺事件」からは、切腹の一番手になった箕浦猪之吉の辞世の詩を記憶しておきたい。「妖氛(ようふん)除却(じょきゃく)して国恩に答ふるに/決然 ()(じん)(げん)を省みる()けんや。/()だ大義をして千載に伝へしめば/一死 元来 論ずるに足らず。」最後の武士の潔さであろう。

大塩平八郎の乱の粗さゆゑか覚醒せぬ社会主義と森鷗外説く

文体の平明をこそ鷗外の歴史小説ここち良きなり

「一死、元来 論ずるに足らず」箕浦猪之吉辞世の詩なり

2022年6月16日(木)

横須賀短歌会の例会へ行ってきた。毎回帰ってくると思うのだが、横須賀は遠い。往路はそうは思わないのだが。

横須賀港には、マニキュアのなかなか個性的な少女がいた。

爪尖は赤から黄色へのグラデーション指さす(かた)を瞬時に炎やせ

イージス艦はあまり美しくない。美しくない兵器は嫌いだ。

イージス艦をその指さして炎やすべし少女よ醜きものは滅ぼせ