4月24日(金)

曇っている。時に明るい。

金沢

  金沢は町の遠くに海見ゆるホテル二十階北の窓より

  空の色映して青き遠き海少し荒れたるかいつの間にか灰色

  浅野川の(しゆん)(ちう)たけて染井吉野。両岸に満開の花散らしをり

『孟子』万章章句下135-3 曰く、「今の諸侯は、之を民に取るや、猶ほ禦のごときなり。苟も其の礼際を善くせば、斯ち君子も之を受くとは、敢て問ふ何の説ぞや」と。曰く、「子(お)(も)へらく、『王者(おこ)る有らば、将に今の諸侯を比して之を誅せんとするか。其れ之を教へ、改めずして而る後に之を誅せんか』と。夫れ其の有に非ずして之を取る者は盗なりと謂ふは、類を充て義の尽るに至るなり。孔子の魯に仕ふるや、魯人猟較(れふかく)すれば、孔子も亦猟較せり。猟較すら猶ほ可なり。而るを況んや其の賜を受くるをや」と。

  長い習慣は尊重して黙殺されるまして諸侯からの贈り物をや

     *

『梁塵秘抄』植木朝子編訳

嵯峨野の(きよう)(えん)は 野口(のぐち)うち出てはいはさきに (きん)(や)鷹飼(たかかひ)(あつ)(とも)が 野鳥合(のとりあ)はせしこそ見まほしき  (四句神歌・雑・三五六)

【現代語訳】嵯峨野のおもしろさといえば、野の入り口を出て岩さきに行くあたり、禁野の鷹飼の淳友が、鷹に野鳥をとらせたとかいうありさまこそ見たいものよ。

【評】嵯峨野の見どころを、鷹飼の逸話を取り入れて生き生きと歌う一首。「野口」は野の入り口の意で、嵯峨野には限らない。「いはさき」は多くの注釈書が地名と捉えた上で、未詳とするが、あるいは地名ではなく、「岩の突き出たところ」の普通名詞か。『平家物語』巻九「老馬」の章段に、一谷の地形を説明して、

三十丈の谷、十五丈岩さきなんど申す所は、人の通ふべきやう候はず。
(三十丈〈一丈は約三メートル〉の谷、十五丈の岩の突き出たところなどは人の通れるところではありません)

とあり、寛元二年(一二四四)のうちに成立したと考えられている『新撰和歌六帖』に、
山川の落ち舞ふそばの岩さきによどめる水のわきかへりつつ (藤原家良)
(山川の流れが落ちて来るそばの岩の突き出たところには、よどんだ水がわき返ってくることだよ)

と見える。嵯峨野にあるのは、さほど険しい「岩さき」ではなかろうが、大堰川べりの目立つ岩を想定し得るのではないだろうか。「禁野」は天皇の狩猟場として一般の使用を禁じた場所、「鷹飼」は、鷹を飼いならして狩をさせる人、鷹匠。敦友は承保三年(一〇七六)一〇月の白河天皇の嵯峨野行幸に奉仕した鷹匠で、平康頼の編んだ説話集『宝物集』巻一に「片野の鷹飼下野の敦友が野鳥合はせけるこそおもしろかりけれ」と見える。「片野」は皇室の遊猟地のあった大阪府枚方市・交野市一帯を指すか。平康頼は、今様の名手として名高く、後白河院の今様の弟子の一人であった。順康は鹿ケ谷事件に連座して鬼界ヶ島に流されていたが、都に戻った治承三年(一一七九)には、『梁塵秘抄』はほぼ完成していたものと思われるから、康頼は当該今様を意識し、類似した表現を用いて敦友の逸話を記した可能性もある。

時代は下るが、至徳三年(一三八六)序、二条良基著『嵯峨野物語』によれば、敦友の放った鷹は、すぐさま雉をとらえて白河天皇の輿の前に落としたので、天皇ははなはだ感心したという。続いて下野敦久が同じく雉をとらえようとしたが、雉は西の山に入り、鷹は東の山にそれていってしまったため、人々は大笑いし、敦友の素晴らしさがより際立ったとされている。

この白河天皇の鷹狩行幸について記したものは多いが、たとえば、堀河天皇(一〇八六~一一〇七在位)の時代に成立した歴史書『扶桑略記』承和三年一〇月二四日条は、「大井河に行幸す。御鷹逍遥なり」とした上で、和歌の会と船遊びについてふれ、嘉応二年(一一七〇)序の歴史物語『今鏡』すべらぎの中「紅葉の御狩」は、この折の白河天皇の詠歌を記す。また『宝物集』は放鷹楽という楽曲を演奏したことに言及する。これらの対して今様は、鷹狩以外のさまざまな遊びにふれていない。散文ほどの情報量を持ち得ない、韻文としての制約が前提とはなるが、和歌や奏楽ではなく、鷹狩にこそ焦点を当てている点に、今様の嗜好が窺われよう。

偏屈房主人
もともと偏屈ではありましたが、年を取るにつれていっそう偏屈の度が増したようで、新聞をひらいては腹を立て、テレビニュースを観ては憮然とし、スマートフォンのネットニュースにあきれかえる。だからといって何をするでもなくひとりぶつぶつ言うだけなのですが、これではただの偏屈じじいではないか。このコロナ禍時代にすることはないかと考えていたところ、まあ高邁なことができるわけもない。私には短歌しかなかったことにいまさらながら気づき、日付をもった短歌を作ってはどうだろうかと思いつきました。しばらくは二週間に一度くらいのペースで公開していこうと思っています。お読みいただければ幸い。お笑いくださればまたいっそうの喜びです。 2021年きさらぎ吉日

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