外は暑そうだ。病院内はエアコンが効いている。退院だ。
鷺五羽が鳴きつつ田圃の畔に降りる稲穂稔れるえびなの田へと
ひよどりは速度落して飛びゆけり黄金の田を睥睨しつつ
続々と畔に降下す。稔り深き海老名田圃をおのおのめぐり

外は暑そうだ。病院内はエアコンが効いている。退院だ。
鷺五羽が鳴きつつ田圃の畔に降りる稲穂稔れるえびなの田へと
ひよどりは速度落して飛びゆけり黄金の田を睥睨しつつ
続々と畔に降下す。稔り深き海老名田圃をおのおのめぐり

堀田善衛『方丈記私記』を読む。いい本だ。1945年、大空襲の際、そこあったのは「感情の、一種の真空状態」だった。しかし「実は私氏自身の内部において、天皇に生命のすべてをささげて生きる、(略)戦慄をともなった、ある種のさわやかさというものも、同じく私自身の肉体のなかにあった」。長明が生きた時代、「朝廷一家が、あたかも鵺ででもあるかのように、ぬらりくらりと危機を乗り越えて行くものであ」り、まさに「古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。ありとしある人は皆浮雲の思ひをなせり」であった。その他いろいろ。鴨長明は意外に凄いのだ。堀田善衛もまた凄いのだ。
東京の下町を焼く大空襲。長明の『方丈記』あれこれ気になる
古京荒れて新都はいまだ成らざるにひとは浮雲のごときとおもふ
古典とは異なるものの面妖さ『方丈記』読む。つぶさに読める
入院中。しばらくすると歌が消える。休息である。

病室は五階の端、窓側である。秋の田が見える。
かろやかに小雲ひむがしへ流れゆくこの軽やかさ秋のものなり
穂の垂れて刈りしほ近しこの秋もたけてゆくなり黄金の田に
この日ごろ黄金の田に穂の重く刈りしほ近く秋もたけゆく

入院の日だ。
いくつかの歌集原稿用意して病室に持ちこむ完成稿を目指し
プリンターに打ち出す歌集の数枚を読みこむたびに旅をし思ふ
旅へ行く歌多くして第六歌集読み返すたびその旅おもふ

迢空忌。朝方は涼しいのだが、暑いのに変わりはない。
紙垂四枚垂らして神棚あでやかなり祈りささげむ地の霊たちに
石上ふる鈴振りて、いにしよをひらくがごとき鶏の鳴き声
地の霊など九月一日の碑に呼びて百年の後祈りささげむ

暑い。問診のため海老名総合病院へ。明後日の入院の前段である。
昨夜、砂原浩太朗のデビュー作『いのちがけ 加賀百万石の礎』を読み終える。前田利家の股肱の臣、村上長瀬のまあ一代記といっていいだろう。利家歿後まで長瀬の活躍をえがいて、なかなか充実した読書であった。
前田利家、股肱の臣の村上長瀬。利家亡き後もいのちがけなり
前田利家 黄金の羽織りの傾奇者。いのちがけなるもののふの伝
ものふの一代記読みをり。痛快なり。いのちがけなるふるまひ楽し

今日から9月。4日にはまた入院だ。暑さは変わらない。
西の空にスーパームーン残りをり満月大きくかがやく朝に
まみどりの樹のけさことにかがやきてスーパームーンことほぐごとし
朝烏けたたましくも鳴きはじめ二羽、三羽追ふこゑに鳴きつつ
