ひと夏を飾りし蟬の抜け殻を十月九日朝野に返す
セルロイドの玩具のやうなる空蟬をためつすがめつ一夏愛す

ひと夏を飾りし蟬の抜け殻を十月九日朝野に返す
セルロイドの玩具のやうなる空蟬をためつすがめつ一夏愛す

日中暑くなる。28℃。
背高泡立草の黄の領分わづかに残る風に吹かれて
あざやけき背高秋の麒麟草すすきに囲まれ寂しげなりき

小雨降る朝、そのまま曇り空へ。午前中21℃。
ひよどりのかしがましきがなんとなく楽しくなれば携帯電話鳴りだす
行き過ぎて背後より木犀の香りくる控へ目なるはわが死者ならむ

昼には29℃。暑いが朝夕は清々しい。
昨日の暮れぎわの空の色
熟れ桃の色全天にひろがればあやしき夜のはじまりである
百日紅はいまだわづかに花残すその木の下に童女のこゑす
をさなごの喜々たるこゑに老いわれのくちびるおのづと綻びはじむ

昨日のことだが、沼津港からの鈍足バスに乗り合わせた女性が、御殿場線でも一緒だった。長泉なめりで降りていったが、なかなかの美形と観た。
たまさかに富嶽の巫女が降下するタブレットを手に吉凶案ず
駿河のをみな秋の女をおもふとき穂すすきしろがね色のかがやき

三島大社を拝し、三島の町の水の流れを辿って歩く。鴨が何羽も水流に遊んでいる。昼前に東海道線で沼津に。沼津港に遊び、御殿場線で富士山の裾野をめぐり松田に出て、小田急線で帰る。秋の富士山、巨大な山塊である。
ホテルの屋上の露天湯。
屋上や露天にさらすわがふぐり
大岡信の詩のあかるさに通ずるか三島の町の水湧くところ
伊豆の国三島水の町である。
面白き水湧く町や妻とゆく
裾野より立ち上がり大き不二の山雲をまとふていまだ夏嶽
御殿場線の窓に来てゐる秋あかね駿河小山の駅に停車す

朝8時、小田急線厚木駅を出発、本厚木で急行に乗り換え、小田原へ。小田原からは東海道線普通列車で熱海を経て三島へ。クレマチスの丘とかへ。ベルナール・ビュフェ美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館、クレマチスガーデン等を半日堪能。三島駅前のホテルに一泊。すべて妻の旅の計画に拠る。
陽のひかり透けたるもあり濃きもある楠の古木を真下に仰ぐ
楠の葉の色枯れて一葉、またひと葉散り落ちてゆく愛鷹山麓
廻るやうに伸びたる枝が交差する太幹ま直ぐなりこの複雑怪木
