2021年8月7日(土)

畑中章宏『廃仏毀釈―寺院・仏像破壊の真実』読了。廃仏毀釈は、後の神社合祀とともに近代日本の国家体制の横暴であったが、地方により差異があり、損害の違いもあった。より細かく検討する必要があるということだろう。私が育った隣町も今では神社になっているが、おてんのうさんと呼ばれ、牛頭天王を祀る社であった。

  明治維新の汚点の一つと思ふなり六地蔵の首いまも戻らず

  その神のすがた知らねど素戔鳴(すさの)()より牛頭天王がよし不可思議の神

妻一回目のウィルス予防注射。

  無花果の実らぬ木下妻も老い

2021年8月5日(木)

藤沢周『世阿弥最後の花』読了。佐渡に流された世阿弥晩年の姿を描いて、おもしろく読んだ。能の詞章や和歌を交えた彫琢された文体がいい。世阿弥同様、佐渡に流された順徳院像も印象的だ。世阿弥は順徳院の追悼の能を舞う。順徳院の歌を読んでみたい。

  ひよどりの三羽が中庭(パティオ)をかけぬけるいつものやうに朝がはじまる

  朝顔の咲く家のまへをとほるとき老いのこころのかろやかならず

  佐渡に渡る世阿弥元清 晩年の翁のすがたおもひみがたし

神奈川県の新型コロナウィルス感染者、1500人を越す。

2021年8月4日(水)

今日も暑い。油蟬が朝からうるさい。

  九階のベランダに鳴く油蟬日の沈むときひときは高く

  中庭のあけぼの杉に生まれたる蟬とおもへば親しきものを

  樹の幹と空中に過す十日ほど腹部鳴動ひたすらなりき

  土の内に七年を過ごす幼虫に蜜のごとき時間(とき)あらばよきかな

2021年8月3日(火)

息子の31回目の誕生日です。今日も猛暑。

  朝焼けは薄桃色から橙色(たうしょく)に雲を染めけさは至極の時間

  南より吹き入る風の湿り気を帯びたる風は人を弱らす

長男は、夏の須坂で生まれたのだが、あの日も暑い日だった。

  素足にて歩けば床の絨毯の湿り感ずる子の誕生日

  あの日から三十一年あれこれとありしが楽しき日々も重ね来

2021年8月2日(月)

昨日は上野に出掛けて10000歩近く歩いたせいか、疲れがある。月曜日は紙・布ごみを出す日である。雑誌の束を抱えるだけで左手が痺れる。

  起き抜けは痴呆のごとし日日(にちにち)の倣ひすら亡失するときがある

  リビング・ルームをわがもの顔に飛び回る小蠅よここは俺の家だぜ

  わが家のゴミから生まれし小蠅ならば家族かいや否、殲滅をせ

2021年8月1日(日)

八朔である。稲の育ちは上々に見える。上野の森に妻と「聖徳太子と法隆寺」、「国宝 聖林寺十一面観音――三輪山信仰のみほとけ」を観てきた。いやぁ、暑かったが、行ってよかった。聖林寺の十一面観音に出逢ったのは大学一年のとき、まだガラスケースもなかった。間近に一人で見上げていた。圧倒されるほどの厳しさを感じた。それから何度訪れただろう。まさか東京で出会えるときがあるとは思ってもみなかった。

  照り葉木の()(むら)をこぼれ腕をやく夏のひかりの暑し、暑し

  脳髄も灼かれて大和法隆寺の諸仏に出逢ふ仏の背にも

  大国主大神木像に手を合はす神秘の像の愛らしくして

  聖林寺十一面観音像の表情の厳しさ東京を厭ひたまふか