2023年11月19日(日)

良い天気だ。青空が広がる。

  大山が紅く色づく朝明けに今日もよき日であることを祈る

  大山につらなる山を紅くして日は昇りくるひむがしの地平

  西之島を出現させる噴火あり十年を経て島大きくなる 13倍だそうだ

永井荷風作『花火・来訪者』(岩波文庫)読了。永井荷風は凄い。時代と社会をちゃんと見て庶民の暮らしに沈潜する。そして文章がいい。「来訪者」は二人の偽書作りの話だが、それに付属する「夢」が卓抜だ。男と女のもつれあいを「性を異にした二個の肉体は溝川を流れる塵芥の相寄って一かたまりとなったようなものである。」

  永井荷風が衢をゆけば江戸の世の地勢浮かび(く)この世にあらず

『論語』六 孔子曰く「若ものよ。家庭では孝行、外では悌順、ひろく愛して仁の人に親しめ。なお余裕があれば書物を学べ。」悌順は、兄や目上の人によく使えて従順であること。書は古典。

『徒然草』201段 相変わらず兼好の蘊蓄が述べられる。退凡、下乗の卒塔婆の置き方。釈尊の霊鷲山説法の時、通路にたてられた卒塔婆、「退凡」は凡人凡夫を退ける。「下乗」は、車馬乗り入れ禁止。202段、これまた薀蓄。十月は神事を憚るか。そんなことはない。

  退凡、下乗卒塔婆の位置を云々する兼好法師したり顔なり

2023年11月18日(土)

いい天気だ。昨日より暖かい。

  卓上に蜜柑ひとつが置かれたりしばし思ふは恥、悔い、怒り

  佐賀産のみかんの甘さ口中に頬ばるときのセンチメンタル

  行き暮れてゆくへ失ふ老年の尾につながるか欲、涙、悲哀

  ベランダにころがる束子(たはし)よくみれば土竜(もぐら)のやうなり毛並みきらめく

大江健三郎の最後のエッセイ『親密な手紙』(岩波新書)を読む。こんな文言に示唆を受ける。「次の世代がこの世界に生きうることを妨害しない、という本質的なもののモラル」こそいま大切だ。「この特別な音楽家は芸術上のプロジェクトになかば生物的な駆動力を持ち込んでいて、多くの文脈、経験、声、衝動が対位法のような網のなかに集約されていくのが感じられる。」、「もう老人の知恵などは/聞きたくない、むしろ老人の愚行が聞きたい/不安と狂気に対する老人の恐怖心が」これはエリオットの詩か。まだ色々あるのだが、読んでくれたまえ。

というわけで、長くなったので『論語』『徒然草』は、おやすみです。

  なかなかに歌に収まらぬ大江健三郎現代の歌をいかに見てゐし

2023年11月17日(金)

朝から雨、途中、少しの間止むものの、昼過ぎまで降る。そして上がるようだ。午後、雨止む。

  街灯り、マンション明り、自動車の後尾灯の点滅、雨中に昏るる

  真夜中のベランダに街を眺めやるマンションの階段灯明るく見える

  夜の窓を覗けば一台の自動車の尾灯の点滅、信号機の前に

『論語』五「子曰く、千乗の国を道びくに、事を敬して信、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす。」『論語』は、政治の書なんだなあ。

  国ひとつ治むるための三ケ条『論語』とはつまり政治の書なり

『徒然草』197段「定額(ぢやうがく)」とは僧のみにあらず「女孺(によじゆ)」もあり。198段「揚名(やうめい)(のすけ)」に限らず、(やう)名目(めいのさかん)というものもある。『政事要略』にある。199段 横川(よかは)の行宣法印が云う「唐土は(りよ)の国」「和国は(りつ)の国」、つまり雅楽の音階のことである。200段 竹の違い。呉竹(くれたけ)河竹(かはたけ)

  兼好法師は物知りなるか『徒然草』には自慢げに書く数段ありき

2023年11月16日(木)

明瞭な朝。東の空が朱茜色に明けてくるが、寒い。この寒さに、初のエアコンを使う。

  ひむがしの空低きところ茜色に彩られさねさし朝の濫觴

  老いの性せむなきものに悩まされ深夜いく度も目覚めたりけむ

一昨日、国立がんセンターにてペット・CTを撮る。

  ペット画像の(おのれ)のすがた醜くてこの世の外のものかとおもふ

『論語』四 曽子さんが云った「吾れ日に三たび吾が身を省る」のだそうだ。曽子は、孔子の門人。孔子より46歳も若い。

  論語読む倣ひはないがこの度はつぶさに一つひとつを読まん

『徒然草』195段、196段ともに久我通基のエピソード。内裏勤めを辞めてから、どうもおかしくなっていたようで「尋常(よのつね)におはしましける時は、神妙(しんべふ)に、やんごとなき人にておはしけり。」(195段)

  木造りの地蔵を洗ふ久我通基尋常(よのつね)にありけるときはまともなりしが

2023年11月15日(水)

昨日は疲れた。戻れば海老名は昏かった。

  卓上に置かれたメガネ一日を疲れし妻の眼鏡がひかる

  鶺鴒二羽愛らしきこゑにもつれ合ひ乱舞を見せる九階の空に

  もつと高く鳶がめぐれる海老名の空朝飯食ひつつ窓越しに見ゆ

『論語』三「子曰く、巧言令色、鮮なし仁。」わたしにとっては『論語』中もっとも著名なことばだ。ことば上手の顔よしでは、ほとんど無いものだ、仁というものは。ずっと肝に銘じていた。

  巧言令色鮮なし仁ときに応じて思ひつつ生く

『徒然草』194段 達人の明察。「明らかならん人の、惑へる我等を見んこと、掌の上の物を見んが如し。」

わが為すところ見通すことの容易なり達人のてのひらにわれら載せらる

2023年11月14日(火)

二度目の築地、国立がんセンター。行きは一人。良く行けたものだ。途中から妻が来る。なかなか大変だった。

  日比谷から築地へタクシーに急ぎゆく車窓に東京の街が流れる

  あひ変はらず院内は人あまたゐる地下へ降りれば患者寡なし

  からうじて空は青くて東京はうつくしき色に暮れなむとする

2023年11月13日(月)

朝は雨が残っていたが、後は晴れた。

  真夜中にペットボトルのお茶を喫むコップに注ぎてりんりんと飲む

  川筋を四羽の鷺が飛びゆける一羽、いちはが緑地をめざし

  いつのまにか晩秋の寒さ。小半日枯れ葉の小径かさがさ音す

青山文平『半席』読了。青山文平は、わたしの贔屓の作家である。単行本が出るたびに買っているが、これは文庫本だ。だから二度目ということになるが、二度目でも新鮮に読むことができる。まあ、忘れてしまったということでもあるが、二度読んでもおもしろいのだ。「半席」について、また内容については、ここでは長くなるので書かないでおく。

  青山文平『半席』を読む。(かち )目付(めつけ)片岡(かたおか)直人(なおと)懸命なりき

『論語』二 有子が言う。有子は、孔子の門人。孔子より43歳若い。容貌が孔子に似ていたという。「君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟なる者は其れ仁の本たるか。」
『徒然草』193段「おのれが境界にあらざるものをば、争ふべからず、是非すべからず。」

  おのれの専門領域にあらざるは争ふべからず是非してはならず