2023年11月5日(日)

まあまあいい天気である。

  薬剤を服用せむと水を汲む浄水にして良き水を汲む

  一服にああこの世界にわれ在るをたしかめてゐる水の冷たさ

  この世から他界へつながる坂上る出雲(いづも)国(のくに)の伊賦(いふ)夜坂(やのさか)を

中上健次『千年の愉楽』を読む。やっぱり中上健次はいい。オリュウノオバ、路地の産婆だが、その目から見た「中本の一統」の血、暴力と早死の系譜が小説の内容だ。文章がいい。露地と他界が混在したかのような祈りが、お経のような文体で綴られる。半蔵、三好、文彦、オリエントの康、新一郎、達夫と早世の顛末が語られる。

  生に重きオリュウノオバに語られて路地の物語よし中本の血よし

『老子』下篇76「強大なるは下(しも)に処(お)り、柔弱なるは上(かみ)に処る。」
『徒然草』183段

  人觝(つ)く牛、人喰ふ馬、人喰ふ犬いづれも咎あり律のいましめ

2023年11月4日(土)

今日も暑い。

  遠くより人夫来りて工事するけふはうるさき土盛多し

  さくら葉の紅葉(もみぢ)したるを拾ひにゆく小さな公園のわかき花の木

  さくら紅葉スケッチブックに写したり赤き色鉛筆あまた使ふ

昔むかし弘文堂書房というところから出ていた現代短歌叢書の一冊、第九巻を古本屋から手に入れた。1940(昭和15)年のものだ。薄いが五島茂、柳田新太郎、前川佐美雄、坪野哲久、五島美代子がそれぞれ二百首ほど選んでまとめたものである。
    前川佐美雄から二首、
    春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ
    あかあかと硝子戸照らす夕べなり鋭きものはいのちあやふし
    坪野哲久から一首、
    曼殊沙華するどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべき

2023年11月3日(金)

明治節だ。明治天皇の誕生日だ。天気はいい。暑いくらいだ。剣道の日本一が決まる。

  目の前をひよどりが飛ぶ左から右へ飛びゆく短く鳴きつ

  ひよどりの短き声が愛らしくぴいよぴいよと鳴きつつ飛べり

  工事車のけふは休日にもかかはらず二、三台来てゐる土掘る音す  

『老子』下篇75「(そ)(た)だ生を以て為すこと無き者は、是れ生を(たつと)ぶより(まさ)る。」

  為政者へもの申しける老子翁人民が飢えたるは税が多すぎるゆゑ

『徒然草』181段「『ふれふれこゆき、たんばのこゆき』、『たまれ粉雪』と言ふところを、誤りて『たんば』とはいふなり」という。182段 鮭の白干しは誤りではない。  

  四条大納言(たか)(ちか)卿なでふ事かあらん鮭の白干し

2023年11月2日(木)

いい天気だ。今日は午後、リハビリが入る。明日の代りだ。

  けふも鳴くあけがらすのこゑ自動車の走行音より強く響く

  山の端に明けの明星かがやけばこの朝のはじまりおだやかであれ

  月高く空にあかるく残りたる山の上はるか浮かべるごとく

『老子』下篇74「夫れ大匠(だいしょう)に代わりてけずる者は、其の手を傷つけざる有ること希なり。」

『徒然草』179段「那蘭陀寺は、大門北向き」は本当か?

180段 左義長は正月の火祭りの行事。法成就の池は神泉苑の池のことである。

  さぎちょうは(ぎ)(ちやう)を焼きあぐる行事なり神泉苑の池にておこなふ

2023年11月1日(水)

いい天気だ。ちょっと暑くなる。リハビリさんと久米さんが来て公園まで歩く。夕暮れ寒い。

  朝がらすけたたましくも鳴きたつるひむがしへむかふ五、六羽の群れ

  穏やかなるときのきたるをたのしむべし紅葉にはじまる秋のひと時

  暗くなれば「大阪ラプソディ」のメロディが急に流れ(く)わが(へや)のうち

『老子』下篇73 「天網恢恢(てんもうかいかい)(そ)にして(しつ)せず。」

『徒然草』176段「御薪に煤けたれば、黒戸といふとぞ。」177段「乾き砂子の用意」178段「別殿の行幸には、昼御座の御剣にてこそあれ」と忍びやかに言ひたりし、心にくかりき。」

  「行幸の際には剣を傍に置く」忍びやかに言ふこころにくかりき

2023年10月31日(火)

いい天気だが、雲が多い。退院後初の診察である。

  後尾灯の赤き点滅つづきをり県道55号線(く)(る)(ま)混みあふ

  午前五時 高きところに月残る十六夜月ひかりかがやく

  太陽神が上り来るべし室内(へやうち)の壁にあかるき日の影ありき

『老子』下篇72  「聖人は、(みずか)ら知りて、自ら(みずから)(あら)わさず、自ら愛して自ら(たつと)しとせず。故に彼を(す)てて此れを取る。」(見せびらかしたり威張ったりして刑罰にたよる政治をすてて、こちらのみずからを知り、わが身をたいせつのする無為の政治を取るのだ。)

『徒然草』173段 「道を楽しぶより気味深きはなし。」(仏道に精進することで得られる安楽より味わい深いものはない。) 

174段 酒の功罪。

  酒飲みの罪ばかりいふ兼好のつけたりのごとく酒も良きなり

2023年10月30日(月)

今日もいい天気だ。

  目薬を一滴しづくに右の眼に垂らせば赤目の色変りゆく

  眼がしらに一滴垂らす目薬にしばし眼つむる眼ににじむまで

『老子』下篇71 「聖人は病あらず、其の病を病とするを以て、是を以て病あらず。」

病は難の意。短所・欠点のこと。

『徒然草』173段 

「小野小町のこと、極めて定かならず。」

  小野小町のこと定かならずと兼好の言ひたれば小町は伝説のひと